制度化へ前進
ベトナム政府が、暗号資産(仮想通貨)市場の提供・発行・取引および関連サービスを対象とする5年間の試験導入を開始する決議を9月9日に公布した。
対象となるのは暗号資産サービス提供者や発行体のほか、国内外の投資家・企業で、同日付で施行されている。
決議では、暗号資産市場の試験導入を「慎重性」、「管理」、「安全性」、「透明性」、「効率性」、「投資家保護」の原則に基づき実施すると定められている。
決議の中で、暗号資産は「民法で定義されるデジタル資産の一形態」として規定され、暗号化技術や類似するデジタル技術により発行・保存・移転・認証される資産とされている。
一方で、証券や法定通貨のデジタル版などは暗号資産には含まれないと明記されている。
プラットフォームの提供はベトナム企業のみに許可され、有限責任会社または株式会社として登録することが義務付けられた。
暗号資産の発行及び提供に関して、暗号資産は、有価証券または、法定通貨以外の実体資産への裏付けが必須となっている。
さらに、発行は外国人投資家のみを対象とし、外国人投資家同士がライセンスを受けたサービス提供者を介して取引する形が求められる。
また国内投資家については、既に保有している暗号資産の口座開設や取引が認められる。ただし、最初のサービス提供者が免許を取得してから6か月後以降、ライセンスを持たないプラットフォームでの取引は行政処分または刑事処分の対象となる。
その他にも、取引所運営を希望する事業者は最低10兆ドン(約559億円)の資本金を必要とし、その65%以上は機関投資家による出資で賄うことが義務付けられている。また暗号資産取引プロバイダーへの外国資本の保有上限は49%に設定された。
加えて人員要件として、金融・IT分野での実務経験を持つ経営陣、情報セキュリティ人材を含む一定規模の専門スタッフ、リスク管理やAML体制なども必須条件とされている。
この試験導入は5年間継続され、その後も新たな法制度が整備されるまでは本決議に基づき市場が運営される。
なお、暗号資産の発行・取引・決済はいずれもベトナムドン建てで行うことが義務付けられている。
ベトナムでは6月にデジタル資産を法的に認める法律が可決されており、2026年1月1日に施行される予定だ。今回の5年間パイロットは、その本格施行に先立ち、制度の運用や市場の安全性を検証する狙いがあるとみられ、同国が暗号資産を正式な金融エコシステムへと組み込むための重要な歩みとなる。
参考:発表
画像:PIXTA