米労働省、個人年金制度の暗号資産投資方針を見直し。過去の警告撤回

中立的立場に回帰

米労働省(Department of Labor:DOL)は、個人年金制度「401(k) 」における暗号資産(仮想通貨)への投資に関するコンプライアンス方針を見直し、特定の資産クラスに対して中立的なアプローチへと回帰する方針を正式に表明した。5月28日に公式ウェブサイト上で発表された。

労働省は2022年、バイデン政権下で発行したコンプライアンス支援リリース(Compliance Assistance Release 2022-01)において、退職プランにデジタル資産を組み入れることに対して慎重な姿勢を示し、プラン受託者に対して「細心の注意(extreme care)」を払うよう呼びかけていた。

この「細心の注意」という表現は、従業員退職所得保障法(ERISA)に明示的に規定されているものではなく、同法に基づく通常の受託者義務の範囲を逸脱している可能性があると、今回のリリースは指摘している。

2022年に公表された前回のリリースに先立ち、労働省は特定の投資商品や戦略に対して一貫して中立的な立場を取ってきた。今回のリリースでは、「401(k)」プランなどの確定拠出型年金制度において、暗号資産を投資対象として組み入れるという受託者の判断を「支持も否定もしない」と明示し、従来の中立的アプローチへの回帰を強調した。

労働省は、投資対象の適否については一律には判断できず、プラン受託者は各投資判断において、対象プランの設計、参加者のニーズ、リスク許容度、情報開示の状況など、あらゆる関連事情を総合的に考慮する必要があるとしている。この文脈依存性の原則については、米連邦最高裁が2014年に示した判例「Fifth Third Bancorp v. Dudenhoeffer」においても認められており、今回のリリースでもその判例が引用されている。

参考:発表
画像:iStock/Lubo-Ivanko

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者