米サークルがNYSEで新規株式公開へ
サークルインターネットグループ（Circle Internet Group）が、米国での新規株式公開（IPO）において、完全希薄化後の企業価値を最大67億1,000万ドル（約9,675億円）に設定していると5月27日に発表した。
サークルはニューヨーク証券取引所（NYSE）にティッカーシンボル「CRCL」で上場予定だ。主幹事はJPモルガン（J.P. Morgan）、シティグループ（Citigroup）、ゴールドマン・サックス（Goldman Sachs）である。
ステーブルコイン大手の同社は、暗号資産（仮想通貨）市場への期待の高まりを背景に、資金調達を図る。
ニューヨークに拠点を置くサークルと一部既存投資家は、1株あたり24～26ドル（約3,461～3,750円）で2,400万株を売り出し、最大6億2,400万ドル（約900億円）を調達する見込みだ。
ドナルド・トランプ（Donald Trump）米大統領率いる政権は、暗号資産を受け入れる姿勢を示し、デジタル資産規制への「合理的」なアプローチを約束している。これにより、業界企業の上場が促進されている。
IPOリサーチとETF（上場投資信託）を提供するルネッサンス・キャピタル（Renaissance Capital）のシニアストラテジスト、マット・ケネディ（Matt Kennedy）氏は「暗号資産関連のIPOの見通しは、この3年間のどの時点よりも良好だ」と述べた。
また米国とその主要貿易相手国間の通商協議の進展もIPO市場を活性化させており、関税問題による市場の混乱が緩和されたことで、企業は株式市場への上場を積極的に進めている。
今回サークルは960万株を新規発行し、既存株主であるアクセル（Accel）やジェネラル・カタリスト（General Catalyst）などのベンチャーキャピタルは1,440万株を売却する。
キャシー・ウッド（Cathie Wood）氏が率いるARKインベストメント・マネジメント（ARK Investment Management）は、サークルのIPOで最大1億5,000万ドル（約216億円）相当の株式を取得する意向を示している。
サークルの今回の上場は、2021年にコインベース・グローバル（Coinbase Global）が株式市場に上場して以来、暗号資産企業としては最大の規模となる。マイク・ノボグラッツ（Mike Novogratz）氏の暗号資産企業ギャラクシー・デジタル（Galaxy Digital）も今月初めにナスダックに上場したばかりである。
サークルは以前、ボブ・ダイアモンド（Bob Diamond）氏支援のSPAC（特別買収目的会社）を通じて90億ドル規模で上場を目指していたが、この取引は2022年末に頓挫していた。
USタイガー証券（US Tiger Securities）のアナリストであるボー・ペイ（Bo Pei）氏は「サークルが再び株式市場に戻ってきたことは、自信を取り戻したことを示している。ただし評価額は25％低下しており、これはより現実的な市場環境と過度な期待の後退を反映している」と述べた。
2013年創業のサークルは、米ドル建てステーブルコイン「USDC」を発行しており、その時価総額は600億ドル（約8兆6,532億円）を超え、暗号資産市場トラッカー「コインゲッコー（CoinGecko）」によると、テザー（Tether）に次ぐ2番目に大きなステーブルコインである。
ステーブルコインとは、通常米ドルなどの法定通貨に連動して価値が固定される暗号資産のことだ。サークルは「USDC」のほか、ユーロ建てステーブルコイン「EURC」も発行している。
サークルのIPOは、米上院でステーブルコイン法案が進展する中で行われており、デジタルトークンの普及をさらに加速させる可能性がある。
JPモルガンは、ステーブルコインの市場規模が今後数年間で5,000億～7,500億ドル（約72兆1,100億～108兆1,650億円）に達する可能性があると試算している。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Stablecoin giant Circle targets $6.7 billion valuation in US IPO
（Reporting by Arasu Kannagi Basil and Pritam Biswas in Bengaluru; Editing by Shinjini Ganguli）
参考：プレスリリース・SEC資料
翻訳：大津賀新也（あたらしい経済）
画像：Reuters
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