米コインベースが職務執行令状請求へ向け答弁書を提出、SECへ法的命令目指す

コインベースの職務執行令状請求へ向けた努力

米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベース(Coinbase)が、米証券取引委員会(SEC)に対する「職務執行令状(マンデイマス/mandamus)」を求める請願書を後押しするための答弁書を提出し、コインベースの請願に対するSECの主張に反論したようだ。コインベースの最高法務責任者のポール・グレワル(Paul Grewal)氏がツイッターで5月24日に報告した。

グレワル氏のツイートによれば、裁判所へ答弁書が提出されたのは5月22日。同氏は「職務執行令状は、ここで示されている異常な事実に対するテーラーメイドの(ぴったりな)救済策だ」とコメントしている。

「職務執行令状」は米国において、裁判所から命令という形で政府・下級裁判所・企業・公的機関に対して行われる司法救済手段である。対象者に対し、法律に基づき行う義務のある特定の行為を行わせるために発行されるものだ。また「職務執行令状」は公的義務の性質を持ち、特定のケースにおいては法定義務となる。

つまり、この令状が正式に発効されれば、SECがコインベースの請願書を拒否した場合でも、デジタル資産規制を決定するために、「職務執行令状」によって対応が義務付けられる可能性があるのだ。

コインベースが提出した答弁書によると「(SECは)コインベースの請願書で提起されたまさにそのトピックについて、暗号資産業界に対する強制執行運動を継続する意図を示したが、他のデジタル資産関連の規則制定請願でも何年も行ってきたようにその請願を無視した」と記されている。

また「SECの現在の強制執行運動は、デジタル資産に対する証券法の適用可能性に関するこれまでの見解から大きく逸脱している。一方でSECは、開示されていない新しい基準の違反について、業界に対し無期限に強制訴訟を起こす権限を主張している」とも述べた。

コインベースは、「(裁判所がSECに対し)これまでの遅れについての説明と、いつまでに回答するかを表明させ、進捗状況を報告するよう命じる」ことも可能だと伝えている。

またコインベースは、同社の申立てが却下されたとしても、裁判所がSECを監視し続け、規則策定を進展させるよう、SECを追い込むべきだと主張している。

なお裁判所が「職務執行令状」を発効する場合、SECには7日間の回答期間が与えられることになるとのことだ。

今までの経緯

コインベースは昨年7月21日、SECに対し「デジタル資産証券規制に関する規則制定を求める請願書」を提出している。

この請願書でコインベースは、デジタル資産証券に関する規則を提示して採択するようにとSECに要求。またコインベースは「デジタル資産証券規制上の取り扱いについて明確性と確実性」を提供するための50項目の具体的質問に対する回答もSECへ求めている。

SECは現在、この請願書に対して約9カ月もの期間、対応していない。

この事態を受けコインベースは4月24日、SECに対して請願書への回答を行わせるために行政手続法を発動するよう、連邦裁判所に要請。

これを受け連保破産裁判所は5月4日、SECに対しコインベースの請願書に10日以内に応答するよう、書記による裁判命令を下した。

しかしSECは5月15日、弁護士を介して、「証券法も行政手続法も、コインベースの要求する[デジタル資産]に関する広範な新規制を発行する義務をSECに課していない」と回答。「請願は却下されるべき」とも述べている。

コインベースに対しウェルズ通知も

コインベースの請願書に回答しないSECだが、3月22日には、コインベースへ「ウェルズ通知(Wells Notice)」を通達している。ウェルズ通知とは、SECが企業・個人に対して、法的措置を講じる予定であることを通達する公式文書だ。

コインベースによると、ウェルズ通知には証券取引法違反の可能性を特定したこと以外の情報は記されていなかったという。コインベースはSECに対し、違反の可能性がある資産について回答を求めたが、SECは対応を拒否したとのことだ。

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参考:答弁書
デザイン:一本寿和
images:iStocks/AndreyPopov

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。 同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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