イーロンマスクがツイッターを440億ドルで買収、スーパーアプリ化の方針か

イーロンマスクがツイッターを440億ドルで買収

イーロン・マスク(Elon Mask)は10月27日にツイッター(Twitter)社の新しいオーナーとなり、自身を誤解させたと非難していたトップエグゼクティブらを解雇した。

ただマスク氏は影響力のあるツイッター(Twitter)のために描いた高い野望をどのように達成するかについて、ほとんど明確にしていない。

電気自動車メーカーのテスラ社のCEOでもあるマスク氏は、ツイッターの検閲を制限する一方で、スパムボットを倒したいとし、またコンテンツをユーザーに提示する方法を決定するアルゴリズムを公開。このプラットフォームが憎悪と分裂の共鳴室になることを防ぎたいと伝えている。

しかしマスク氏はどのようにしてこれらを実現するのか、誰が会社を経営するのか、その詳細を明らかにしていない。彼は雇用を削減する予定だと言っており、ツイッター社の約7,500人の従業員は将来について気をもんでいる状態だ。

そしてマスク氏は「より多くのお金を稼ぐためにツイッターを買ったのではなく、私が愛する人類を助けようとするために買った」と伝えている。

関係者によると、マスク氏はツイッター社の最高経営責任者パラグ・アグラワル(Parag Agrawal)氏、最高財務責任者ネッド・シーガル( Ned Segal)氏、法務・政策責任者ビジャヤ・ガッデ(Vijaya Gadde)氏を解雇した。

マスク氏は、ソーシャルメディア上の偽アカウントの数をめぐって、自らとツイッターの投資家に誤解を与えたとして、彼らを非難していた。

また関係者は「アグラワル氏とシーガル氏は取引終了時にツイッターのサンフランシスコ本社にいたが、外に連れ出された」と付け加えている。

なおツイッター社、マスク氏、および幹部に対しコメントの要請をしたが、すぐには応じなかった。 なお今回の440億ドル(約6.4兆円)の買収は、マスク氏がこの買収を完了させるかどうかに疑念を抱かせた、紆余曲折に満ちた驚くべき武勇伝の集大成だ。

この買収は、今年の4月4日にマスク氏が同社の株式を9.2%取得し、筆頭株主となったことが発端だった。 マスク氏はその後ツイッターの役員になることに同意したが、土壇場で渋り、代わりに1株あたり54.20ドルでツイッター社の買収を提案した。

この提案はツイッターにとって、マスク氏のジョークの1つと解釈すべきかどうか迷っていた。 しかしマスクの申し出は本物で、4月後半のわずか1週間の週末で、彼が提示した価格で両社は取引合意に至った。

これは買収の際によく行われる機密情報のデューデリジェンスをマスク氏が行うことなく行われた。 その後数週間のうちに、マスク氏は考え直した。

彼はツイッターのスパムアカウントは、規制当局への提出書類で公表された収益化可能なデイリーアクティブユーザーの5%未満というツイッターの推定値よりもかなり高いと考えていると公に訴えた。

そして彼の弁護士は、この件に関する彼の情報提供の要求にツイッターが応じなかったと非難した。 この険悪な雰囲気から、マスク氏は7月8日に、ツイッター社がボットについて誤解させ、協力しなかったとして、両社の取引を打ち切ると通告した。

その4日後、ツイッター社はマスク氏を、同社が法人格を持つデラウェア州で提訴し、取引の完了を強要した。 そのころには、インフレ対策として連邦準備制度理事会が行う利上げが米国経済を後退させるのではないかという懸念から、ソーシャルメディア企業の株価と株式市場全体が急落していた。

ツイッター社は、マスク氏が買い損をしていると非難し、払い過ぎだと思ったので取引から手を引きたかったのだと主張した。 法律アナリストの多くは、ツイッター社が最も強い主張をしており、裁判でも勝訴する可能性が高いと述べていた。

ツイッター社の元セキュリティ責任者ペイター・ザットコ(Peiter Zatko)氏が8月に内部告発者として名乗りを上げ、同社がセキュリティとデータプライバシーに関する弱点を公表しなかったと主張した後も、彼らの見方は変わらなかった。

10月4日、今月末の裁判開始に向けてツイッターの弁護士による宣誓証言を控えていたマスク氏は、再びUターンし、約束通り取引を完了させることを申し出た。そしてデラウェア州の裁判官は、10月28日までに取引を完了し、裁判を回避するようマスク氏に命じた。

CHIEF TWIT

マスク氏は10月26日に満面の笑みで流し台を持ってツイッターの本社に入り、その後「let that sink in」とツイートした。そして同氏はツイッターのプロフィールで自分の説明を 「Chief Twit」に変更した。

また同氏は大規模なレイオフ(一時解雇)が行われるのではないかという従業員の不安を鎮め、ツイッターのコンテンツモデレーションルールに対する過去の批判がツイッターの魅力を損なうことはないと広告主に断言した。

マスク氏は「ツイッターは明らかに、何の影響もなく何でも言えるような、自由奔放な地獄絵図になることはできません」と広告主への公開ドキュメントで伝えている。 なおマスク氏はツイッターを送金からショッピング、自動車による送迎サービスまで提供するスーパーアプリを作るための基盤として考えていることを示唆している。

マスク氏は10月19日に行われたテスラのアナリスト向け電話会議で「私の考えでは、ツイッターの長期的な可能性は、現在の価値よりも桁違いに大きい」と伝えていた。

しかしツイッターは、ビジネスに不可欠な最もアクティブなユーザーの取り込みに苦戦している。これらの「ヘビー・ツイーター」は、月間全体ユーザーの10%未満だが、全ツイートの90%、世界収益の半分を生み出している。

マスク氏は5月、米連邦議会議事堂襲撃事件後に解任されたドナルド・トランプ氏のツイッター追放を撤回すると述べたが、前米大統領は同プラットフォームに戻ることはないとしている。

その代わり、自身のソーシャルメディアアプリ「Truth Social」を立ち上げた。 ツイッターの株式は、27日のニューヨークでの取引を0.3%増の53.86ドルで終え、1株あたりの取引価格54.20ドルから少し割り引かれた金額となった。そして同株式は10月28日にニューヨーク証券取引所から上場廃止となる予定だ。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Sheila Dang and Greg Roumeliotis in New York; Editing by Nick Zieminski and Edwina Gibbs)

翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
images:Reuters

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竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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