OneKey創業者、古いiPhoneでのシードフレーズ保管に警鐘。機内モードでも攻撃リスク

古いiPhoneのシードフレーズ保管に注意喚起

暗号資産(仮想通貨)ウォレットを開発するワンキー(OneKey)の創業者イーシー(Yishi)氏が、古いiPhoneをシードフレーズの保管に使用する危険性について、10月31日に自身のXアカウントで注意を呼びかけた。

同氏は、iPhone 11以前のモデルなどにはiOSの更新では修正できない脆弱性が存在し、機内モードに設定しても物理的な攻撃を防げないと指摘した。

注意喚起の背景には、10月に相次いだiPhoneの脱獄(ジェイルブレイク)に関する報告がある。脱獄は、iOSの制限を回避して通常は許可されない操作を可能にすることだ。セキュリティ研究チームのカリフ(Calif)は10月16日、iPhone 18 Proの脱獄を実演した。

その後、アップル(Apple)は10月26日にiOS 27.2を公開し、カリフは使用した脆弱性の大部分が修正されたと説明した。一方、日本のイコタス・ラボ(Ikotas Labs)は10月30日に同バージョンの脱獄成功を主張したが、イーシー氏は証拠が不十分として未確認の情報とみている。

シードフレーズは、暗号資産ウォレットの復元に使用する単語の組み合わせで、第三者に知られると資産を不正に移動されるおそれがある。このため、古いスマートフォンを初期化して機内モードに設定し、保管専用端末として使用する例もある。

しかし、iPhoneの起動処理を担う「ブートROM(BootROM)」に脆弱性がある場合、通信を遮断するだけでは攻撃を防げない。ブートROMは製造時にチップへ書き込まれるプログラムで、通常のiOSアップデートでは修正できない。イーシー氏によると、iPhone 4SからiPhone Xには2019年に公開された「チェックメイト(checkm8)」、iPhone XSや11シリーズなどには2026年6月に公開された「usbliter8」と呼ばれる脆弱性が存在する。

物理的な攻撃の仕組みと推奨される対策

イーシー氏によると、攻撃者は対象端末を物理的に入手し、復旧用のDFUモードと専用のUSB機器を利用することで、iOSの起動前に独自のコードを実行できる可能性がある。ただし、これだけでシードフレーズが盗まれるわけではなく、iPhone XSや11ではパスコードや「セキュアエンクレーブ(Secure Enclave)」による保護が残る。セキュアエンクレーブは、暗号化に関わる秘密情報などを保護する独立したセキュリティ機構だ。

一方、短いパスコードや強度の低いウォレットアプリのパスワード、更新されていないiOSは、情報漏えいのリスクを高める要因になるとのことだ。例えば、攻撃者が短いパスワードで暗号化されたシードフレーズのファイルを取得した場合、端末の外部でパスワードを繰り返し推測する「総当たり攻撃」を試みる可能性がある。

また、イーシー氏は端末が第三者の手に渡る危険性にも言及した。ホテルの部屋などで所有者に気付かれずに端末を操作・改ざんする手法は「イービルメイド攻撃(Evil Maid Attack)」と呼ばれ、返却後も異常に気付かない場合があるとのことだ。

対策として、同氏は古いiPhoneにシードフレーズを保管している利用者に対し、信頼できる環境で新しいシードフレーズを生成し、暗号資産を移動するよう推奨した。特に、端末が長時間手元から離れた場合は、早めの移行を勧めている。なお、同じシードフレーズから別のウォレットアドレスを生成するだけでは、漏えい時のリスクは解消できない。

そのほか同氏は、長い英数字のパスコードやウォレットアプリのパスワードの使用、iOSの更新、不明なUSB充電器やケーブルの回避などを推奨した。多額の暗号資産を保有する利用者などには、攻撃を受ける機会を減らす「ロックダウンモード」の利用も提案した。

ハードウェアウォレットのバックアップ方法にも議論

この投稿に対し、Xユーザーのフー・ツイリン(胡翠霖)氏は11月1日、ハードウェアウォレットのリカバリーフレーズを紙や金属板に記録する方法にも、第三者に取得されるリスクがあると指摘した。ハードウェアウォレットは、暗号資産の秘密鍵を保護し、取引の署名などを行う専用端末だ。リカバリーフレーズは、今回の文脈ではシードフレーズとほぼ同じ意味で使用されている。

フー氏は、ワンキーを含む多くのハードウェアウォレットが、初期設定時にリカバリーフレーズを端末の外部へ記録するよう求めている点に疑問を呈した。実際にワンキーの公式ヘルプでは、「ワンキー・クラシック1S(OneKey Classic 1S)」の利用者に対し、付属の用紙へリカバリーフレーズを書き留め、端末上で記録内容を確認する手順を案内している。

これに対してイーシー氏は、「だからこそ、私たちはシードカード(SeedCard)を開発した」と返信した。ワンキーの公式資料によると、シードカードはリカバリーフレーズを暗号化してオフラインで保管するバックアップ用カードだ。ただし、対応するのはワンキー・プロ(OneKey Pro)シリーズで、前述のワンキー・クラシック1Sを含むクラシックシリーズには対応していない。

参考:ワンキー
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。