チェーンリンク、機関投資家向けDeFi融資ソリューション「CustodySync」稼働開始

チェーンリンクの「CustodySync」が稼働開始

ブロックチェーン向けオラクルサービスを提供するチェーンリンク(Chainlink)が、機関投資家向けの新ソリューション「チェーンリンク・カストディシンク(Chainlink CustodySync)」の稼働開始を10月26日に発表した。

同ソリューションにより、機関投資家はデジタル資産を適格カストディアンに保管したまま、その資産を担保に分散型金融(DeFi)のレンディング市場から借り入れできるようになる。また、米デジタル資産カストディ企業アンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)傘下のアンカレッジ・デジタル・バンク(Anchorage Digital Bank)を公式ローンチパートナーとして稼働を開始したとのこと。ただし、実際の融資取引の開始状況は明らかにされていない。

カストディアンとは、顧客に代わって資産を保管・管理する事業者のことだ。なかでも適格カストディアンは、一定の法令上の要件を満たす資産保管事業者を指す。また、DeFiレンディングとは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを利用して暗号資産を貸し借りする仕組みだ。

従来、カストディシステムとDeFiレンディングプロトコルは、相互運用を前提に設計されていなかった。チェーンリンクによると、機関投資家がDeFiレンディング市場を利用するには、通常、既存のカストディ環境から資産を移動する必要があった。しかし、こうした資産の移動は、機関投資家の内部規定やセキュリティ要件などと相容れない場合があるとのこと。

また、カストディアンとDeFiレンディングプロトコルが担保の残高や価格を別々に管理すると、両システムの情報にずれが生じる可能性がある。例えば、担保価値に対する借入額の比率を示すLTV(Loan-to-Value)の計算結果が一致しない場合、誤った清算や清算の遅延につながるリスクがある。清算とは、担保価値の下落などによってLTVが一定の基準を超えた際に、貸し手の損失を防ぐため担保資産を売却する処理を指す。

保管資産を移動せずに担保化、融資情報をオンチェーンと同期

こうした課題に対応するカストディシンクは、適格カストディアンの担保管理システムとDeFiレンディング市場を、借り入れから返済、清算までの過程で同期させるソリューションだ。担保残高の正式な記録はカストディアン側のシステムで管理し、チェーンリンクのインフラを通じてDeFiレンディング市場と情報を共有する。

具体的には、機関投資家がカストディアンに預け入れた担保資産の残高が、チェーンリンクの「プルーフ・オブ・リザーブ(Proof of Reserve)」を通じてオンチェーンに公開される。さらに、保管資産を表す譲渡制限付きの受領トークンがDeFiレンディング市場に配置され、借り入れの担保として利用される。ただし、この受領トークンはレンディング市場との連携の範囲外では、裏付けとなる保管資産への請求権を持たない。

借り入れ時には、DeFiレンディング市場から借り手に資産が直接送金される。また、借り入れや返済、利息の発生に関する情報は、カストディアンの記録に自動的に反映される。こうしたシステム間の処理には、チェーンリンクの「チェーンリンク・ランタイム・エンバイロメント(Chainlink Runtime Environment:CRE)」が使用される。CREはカストディアンの担保管理システムを監視し、付与された権限に基づいてオンチェーン処理を実行する。

融資の管理では、チェーンリンクが「チェーンリンク・データフィード(Chainlink Data Feeds)」を通じて、DeFiレンディング市場に価格データを提供する。一方、カストディアンのオフチェーンシステムには「チェーンリンク・データストリーム(Chainlink Data Streams)」を通じて同じ価格データを提供する。これにより、双方が共通のデータに基づいてLTVを計算できる仕組みだ。

融資が定められた清算基準に達した場合、レンディングプロトコルから任命された担保管理代理人が所定の手続きに従って担保資産を売却する。カストディシンクは確定した売却代金をオンチェーンに記録し、売却の決済が完了するまで融資ポジションの安定性を維持する。その後、最終的な決済は複数の処理を一体として実行するアトミックトランザクションによって完了するという。

Anchorage Digitalが初の導入企業に、機関投資家のDeFi利用を支援

アンカレッジ・デジタル・バンクは、米国初の連邦認可を受けたデジタル資産銀行だ。今回の連携では、アンカレッジ・デジタルのカストディインフラと担保管理製品「アトラス・コラテラル・マネジメント(Atlas Collateral Management)」を利用する。同グループは担保管理代理人として、融資状況の監視や追加担保の管理、清算などの業務を担うとのこと。

市場規模について、チェーンリンクは、DeFiレンディング市場の預け入れ資産が800億ドル(約12兆6,400億円)を超え、実行中の融資が300億ドル(約4兆7,400億円)を超えていると説明している。一方、カストディアンが保管するデジタル資産の総額は約7,000億ドル(約110兆6,000億円)で、従来のカストディ市場における約250兆ドル(約3京9,500兆円)の資産総額の0.5%未満にとどまるという。

チェーンリンクは、カストディシンクの導入によって、カストディアンがレンディング市場ごとに個別の連携システムを構築する負担を軽減できると説明している。これにより、市場投入までの時間短縮や運用負担の軽減につながるとのことだ。

なお、カストディシンクで利用できる機能はカストディアンによって異なり、アンカレッジ・デジタル・バンクでもすべての機能が利用可能とは限らないとチェーンリンクは説明している。

参考:チェーンリンク
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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