仏4当局がMiCA見直しを提言
フランスの金融当局など4機関が、欧州連合(EU)の暗号資産(仮想通貨)市場規則「MiCA」の見直しに向けた共同提言を10月21日に公表した。ユーロ建てステーブルコインの普及促進や、「マルチ発行(multi-issuance)」への規制整備、欧州証券市場監督局(ESMA)の監督権限強化などを求めている。
提言は、フランス経済・財務省の国庫総局(DG Trésor)、金融市場庁(AMF)、フランス銀行、健全性監督破綻処理機構(ACPR)の4機関によるもの。欧州委員会が実施したMiCA見直しに関する意見募集への回答として、73ページの文書を提出した。
仏当局は、ユーロ建て電子マネートークン(EMT)について、トークン化金融の決済や国際送金、企業の資金管理などでの活用を支持した。米ドル建てステーブルコインへの過度な依存が、EUの通貨主権や戦略的自律性に影響する可能性も指摘している。
また、MiCAに基づく認可実績がない資産参照型トークン(ART)について、影響評価を前提に区分自体の廃止を検討するよう提案した。
EMTの利払い規制では、発行体による利払い禁止の維持を求める一方、暗号資産サービス提供者(CASP)など第三者による保有者への報酬については、一定の条件下で認める枠組みを検討すべきだとした。
準備資産についても、銀行預金の固定的な最低保有比率を見直し、流動性要件や取引相手の分散など、リスクに応じた規制への移行を提案している。
ステーブルコインのマルチ発行に厳格な条件
今回の提言では、同一のステーブルコインをEU域内と域外の複数の発行体が発行するマルチ発行モデルへの対応も主要な論点となった。
仏当局は、域内外で発行されたトークンが相互に交換可能な場合、金融市場の混乱時に域外の保有者からEU側の発行体に償還請求が集中し、準備資産が不足するリスクを指摘した。また、第三国当局によって域内外の準備資産の移転が制限される可能性も懸念している。
こうしたリスクを踏まえ、マルチ発行を一律に禁止するのではなく、厳格な条件付きで認めるよう提案した。
具体的には、欧州委員会による第三国の規制・監督制度の同等性認定と、監督当局間の覚書(MoU)締結を前提条件とする。また、対象トークンを自動的に「重要」区分に指定し、EU側の発行体を欧州銀行監督局(EBA)の直接監督下に置くことを求めた。
さらに、流動性ストレステストや必要に応じた超過担保の確保、EU側発行体の償還義務をEU域内の保有者に限定する措置などを提案した。第三国との相互主義も条件とし、必要な安全策が整備されない場合にはマルチ発行モデルを避けるべきだとしている。
重要CASPの監督をESMAに集約するよう提案
監督体制については、重要なCASPや暗号資産関連事業を複数手がける企業グループの暗号資産関連事業を、ESMAが直接監督する仕組みを提案した。
重要CASPの判定では、アクティブ利用者数の基準を引き下げるほか、顧客から預かる暗号資産の規模やグループ構造の複雑さなども考慮するよう求めた。重要CASPへの健全性規制の強化や、取引プラットフォームの最低資本要件の引き上げも提案している。
また、ステーブルコイン以外の暗号資産の募集に関しては、ホワイトペーパーの届出先をESMAに一本化し、関連する執行権限も集約する「ワンストップ・ショップ」の導入を求めた。
DeFiへの接続審査や認証制度も提案
分散型金融(DeFi)については、顧客をDeFiプロトコルにつなぐCASPに事前審査と継続的な監視を義務付け、審査の不備などに起因する一定の顧客被害について責任を負わせる考えを示した。また、一定規模以上の完全分散型プロトコルには、民間機関による認証制度の導入も提案している。
このほか、MiCAに準拠しないステーブルコインに関するサービスをEUで認可されたCASPが提供することの明示的な禁止や、暗号資産と金融商品の分類基準の明確化なども求めた。
今回の提言は欧州委員会への意見表明であり、規制改正が決定したわけではない。欧州委員会はMiCA第140条に基づき、2027年6月30日までに規則の適用状況に関する報告書を提出する予定だ。
参考:フランス4当局のMiCA見直し共同回答・フランス国庫総局・公式発表・欧州委員会・MiCA見直し意見募集
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