Zcash、次期ネットワークアップグレード「NU7」巡る投票結果を公開。25秒ブロックや半減期維持を支持

NU7投票で25秒ブロックや半減期維持を支持

プライバシー保護機能を特徴とするブロックチェーン「ジーキャッシュ(Zcash)」の次期ネットワークアップグレード「NU7」を巡る投票結果が9月14日に公開された。

投票では、ブロック生成間隔を75秒から25秒へ短縮する案や、現在の半減期を維持する案などが支持された。今回の「NU7コインホルダー投票(NU7 Coinholder Vote)」は、Zcashのプロトコル開発に取り組むヴァラー・グループ(Valar Group)とプロジェクト・タキオン(Project Tachyon)が8月25日から9月14日まで実施した。両組織はジーキャッシュのスケーラビリティ向上に向けた暗号技術やノードソフトウェアの開発などに取り組んでいる。

同投票は一般的な1人1票とは異なり、対象となる暗号資産(仮想通貨)ZECの保有量が投票結果に反映される。また、ヴァラー・グループが開発した専用の投票用ブロックチェーンを使用し、投票者のプライバシーを保護しながら集計できる仕組みが採用された。

NU7は、ジーキャッシュのコンセンサスルールやネットワーク機能を更新する次期ネットワークアップグレードだ。今回の投票では、ZECの発行方法や将来の再循環時期、旧シールドプロトコル「スプラウト(Sprout)」に対応するバージョン4(v4)トランザクションの無効化時期、ブロック生成間隔、NU7のリリース方針についてZEC保有者の意向が確認された。

投票対象となったのは、8月24日のスナップショット時点で指定されたシールドプール内に保有されていた使用可能なZECだ。対象となった約360万ZECのうち約240万ZECが投票に参加した。ヴァラー・グループとプロジェクト・タキオンは事前に、100万ZEC以上が少なくとも1つの設問に参加した場合、投票結果をZEC保有者の意向を示す正当性と代表性のあるものとみなす方針を示していた。

このうち、ブロック生成間隔を現在の75秒から25秒へ短縮する案には2,397,669.375ZECが投じられ、反対は141.625ZEC、棄権は1,652.250ZECだった。賛成票は同設問に投じられたZECの約99.9%を占めた。

この変更は、ジーキャッシュの仕様変更などを提案する文書「ジーキャッシュ・インプルーブメント・プロポーザル(Zcash Improvement Proposal:ZIP)」の「ZIP 218」に基づく。ZIP 218では、最初の承認までの平均的な待ち時間を約75秒から約25秒へ短縮し、決済や暗号資産取引所への入金、クロスチェーンブリッジなどの利用体験を改善することを目的としている。

一方、ブロック生成数が3倍になってもZECの発行速度が3倍になるわけではない。ZIP 218では1ブロックあたりの報酬を調整し、一定時間あたりのZEC発行量を現在と同水準に維持する。また、ブロック数の増加によるネットワークへの負荷を抑えるため、シールドプールで1ブロックあたりに処理できるアクション数にも上限を設ける。

ZECの発行方法については、現在の半減期を維持する案に2,375,932.375ZECが投じられ、同設問に投じられたZECの約98.9%を占めた。半減期は、一定期間ごとに新たに発行されるZECのブロック報酬を半分に減らす仕組みだ。

これに対し、半減期を廃止してブロック報酬を時間とともに緩やかに減少させる発行曲線へ移行する案には22,384.875ZEC、発行方法の変更をNU7に含めない案には4,147.625ZECが投じられた。

発行方法とあわせて論点となったのが、ネットワーク・サステナビリティ・メカニズム(Network Sustainability Mechanism:NSM)によって流通から除外されたZECの扱いだ。ZECを流通から除外する仕組みはすでに承認されている一方、将来のブロック報酬として再循環させる方法や開始時期は未確定となっていた。

今回の投票では、再循環の開始時期として2031年2月を選択した票が2,319,643.750ZECとなり、同設問に投じられたZECの約96.6%を占めた。「可能な限り早く」は70,239.625ZEC、2027年2月は6,283ZECだった。なお、ZECを流通から除外する仕組みを定める「ZIP 233」は今回の投票で示されたNU7の対象機能には含まれていない。

v4トランザクションについては、NU7の有効化と同時に無効化する案に2,333,854.625ZECが投じられた。v4が対応するスプラウトは2018年に非推奨となり、新規入金もすでに停止されている。投票開始時点でスプラウトに残るZECは23,000ZEC未満で、スプラウトを利用したトランザクションは全取引量の0.1%未満とされていた。

NU7のリリース方針については、9月30日までに実装が完了していない機能を対象から外し、NU7を可能な限り早くリリースする案に2,382,601.500ZECが投じられた。一方、投票で支持されたすべての対象機能が完成するまでNU7を延期する案は12,707.500ZECだった。

NU7を巡ってはコインホルダー投票と並行して、ジーキャッシュ・ファウンデーション(Zcash Foundation)が運営する諮問パネル「ジーキャッシュ・コミュニティ・アドバイザリー・パネル(Zcash Community Advisory Panel:ZCAP)」などでも同じ5つの論点について意向調査が実施された。ZCAPでは投票資格を持つ198人のうち135人が参加し、回答率は68%だった。

コインホルダー投票がZECの保有量を結果に反映する一方、ZCAPはパネルメンバーを対象とした諮問的な意向調査となる。このほか、ZecHub DAOやZcash Engineering Caucus、Zcash Brasilでも投票が行われた。

複数の投票では、v4トランザクションのNU7での無効化や25秒ブロックへの移行、NU7のリリース方針についておおむね同じ方向性が示された。一方、NSMによって流通から除外されたZECの再循環時期では意見が分かれた。コインホルダー投票では2031年2月が支持されたが2031年2月を選んだのに対し、他の複数のパネルでは「可能な限り早く」とする回答が多かった。

この結果を受け、シールデッド・ラボ(Shielded Labs)、プロジェクト・タキオン、ゾドル(ZODL)、ジーキャッシュ・ファウンデーション、ヴァラー・グループの5組織が協議し、2031年2月を採用する方向で一致した。この5組織は、コインホルダー投票とZCAPで使用する設問の調整にも関わっていた。

5組織は2031年2月について、投票結果の「最も保守的な解釈」と説明した。状況が変化してZECをより早く再循環させる理由が生じた場合には、改めて投票を実施して時期を再検討できるとのことだ。

なお、今回の投票結果だけでジーキャッシュのネットワーク仕様が自動的に変更されるわけではない。投票で支持された変更をNU7へ反映するには、技術仕様の策定やコードの実装、テストなどを経てネットワークアップグレードを実施する必要がある。

参考:NU7コインホルダー投票・ ZIP 218 ・ NU7ネットワークアップグレードの導入仕様・ ZCAP投票開始 NU7意向調査結果
画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。