米上院共和党、クラリティ法案の「最終案」提示。トランプ大統領も倫理規定強化を了承

トランプ大統領、倫理規定強化を了承

米連邦議会上院の共和党議員らが、暗号資産(仮想通貨)の市場構造を定める「デジタル資産市場明確化法(Digital Asset Market Clarity Act:CLARITY Act)」について、上院で審議する代替修正案の最終案を9月14日(現地時間)に公表した。

法案審議入りに向けた討論終結には60票が必要となる。共和党議員全員が賛成した場合でも少なくとも7人の民主党系議員(民主党または無所属)の支持が必要となる見通しで、15日に予定される手続き採決を前に与野党の交渉が最終局面を迎えている。

共和党のシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)、ジョン・ブーズマン(John Boozman)、ティム・スコット(Tim Scott)の各上院議員によると、今回の案には民主党側の要請を受けた126項目の実質的な変更が盛り込まれた。

今回の改定で大きな焦点となったのが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領を含む公職者に対する倫理規定だ。

トランプ大統領は、共和党のトム・ティリス(Thom Tillis)上院議員と民主党のルーベン・ガレゴ(Ruben Gallego)上院議員らが提示していた倫理規定案のうち、匿名を条件に説明した共和党上院幹部スタッフによると「約80%」を受け入れたという。

最新案では、大統領を含む連邦公職者やその配偶者などによるデジタル資産の発行・スポンサー活動を制限する。また、デジタル資産の発行などを主な収益源とする事業体に1万5,000ドル以上の持ち分を持つ場合、原則として売却するか、適格ブラインドトラストに移管することを求める。

また、利益相反規定の執行において州司法長官にも一定の役割を認める。州司法長官への権限付与については、ホワイトハウス側がこれまで政治的に利用される可能性などを懸念していたと報じられている。

一方、最新の倫理規定については民主党側から不十分との声も上がっている。エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員らは、州司法長官がトランプ大統領を含む公職者本人を直接提訴できない点などを問題視している。

ホワイトハウスで暗号資産政策を担当するパトリック・ウィット(Patrick Witt)氏は14日、ワシントンD.C.で開催されたソラナ・ポリシー・インスティテュート(Solana Policy Institute)のイベントで、トランプ大統領が最新の倫理規定を承認したと説明。

民主党側からの批判に対しウィット氏は、今回のような強力な倫理規定が盛り込まれた法案に反対票を投じることは、民主党議員にとって難しい判断になるとの見方を示した。

一方、暗号資産業界が重視してきた「ブロックチェーン規制確実化法(Blockchain Regulatory Certainty Act:BRCA)」に関する規定では、一部後退もみられた。

最新案では、利用者資産を一方的に管理・移転できないブロックチェーン開発者やサービス提供者などを特定の連邦刑事法から保護する規定が削除された。これにより、送金業者としての登録義務などに関する民事上のセーフハーバーは残る一方、刑事責任に関する明示的な保護は弱まった。

この変更は、ネバダ州選出のキャサリン・コルテス・マスト(Catherine Cortez Masto)上院議員らとの交渉を反映したものだという。

ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のリサーチ責任者アレックス・ソーン(Alex Thorn)氏は、刑事法上の保護が削除されたことを法案支持者にとっての「後退」と評価。業界からは、暗号資産ミキサー「トルネードキャッシュ(Tornado Cash)」の開発者ロマン・ストーム(Roman Storm)氏をめぐる事件などで問題となった刑事法上の論点が解消されないことへの懸念も出ている。

これについてウィット氏は、修正後もBRCAは「しっかりした」内容だとの認識を示している。

ステーブルコインの報酬をめぐっては、共和党側は5月にティリス氏と民主党のアンジェラ・アルソブルックス(Angela Alsobrooks)上院議員がまとめた合意を維持した。

銀行業界が求めていた報酬規制のさらなる強化は盛り込まず、代わりに、法律成立後18か月以内に、総資産100億ドル未満のコミュニティ銀行から決済用ステーブルコインへの有利子預金の移動が、総体として重大な悪影響を与えたと財務長官が書面で認定した場合、銀行預金の利息・利回りに類似する支払いを禁止する規則の策定を財務長官に義務付ける「サーキットブレーカー」条項を追加した。18か月は認定を行える期限であり、規制が一時的であることを意味しない。

同条項では、一定の条件下でステーブルコイン報酬を一時的に制限できる仕組みが設けられている。

15日に重要な手続き採決

共和党側は今回の案を「最終案」と位置付けている。

ウィット氏も14日、今回の案について「最良かつ最終の提案」と表現。60票を確保できるかどうかについて、政策上の問題というよりも政治的な判断に左右されるとの見方を示した。

ただし法案成立の先行きは依然として不透明だ。民主党議員の一部は最新の倫理規定について懸念を示しており、共和党側にさらなる修正を求める動きも出ている。

また法案が上院を通過できなかった場合について、ウィット氏は米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)などによる規制対応の可能性にも言及。「規制当局にはすでに広範なルール制定権限がある」と述べた。

クラリティ法案の審議入りに向けた手続き採決は、15日午後2時15分(米東部時間)に予定されている。

参考:報道1報道2
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者