米18司法長官、暗号資産法案「CLARITY法案」に反対表明。詐欺対策の権限低下を懸念

暗号資産詐欺の被害拡大を指摘

米ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ(Letitia James)司法長官が、17州と首都ワシントンD.C.の司法長官による超党派連合を率い、米連邦議会で審議中の暗号資産(仮想通貨)市場構造法案「デジタル資産市場明確化法案(Digital Asset Market Clarity Act:CLARITY Act)」に反対する書簡を米上院議員らに送付したと9月14日に発表した。

書簡にはニューヨーク州を含む17州と首都ワシントンD.C.の計18司法長官が署名した。宛先は米上院銀行・住宅・都市問題委員会のティム・スコット(Tim Scott)委員長とエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)筆頭理事。司法長官らは、現行の法案が暗号資産詐欺から投資家を保護する州当局の権限を弱める可能性があると警告している。

ジェームズ氏は、「私のオフィスは、ニューヨーク州民と全米の人々を横行する暗号資産詐欺から守る取り組みを主導してきた。現状のクラリティ法は詐欺師を勢いづかせ、各州司法長官が投資家とその資産を守る権限を奪いかねない」とコメント。議会に対し、現行案の可決を見送るよう求めた。

米連邦捜査局(FBI)の「2025年インターネット犯罪報告書(IC3)」によると、2025年に暗号資産が関係する苦情で報告された被害額は約114億ドル(約1.76兆円)で、前年比22%増加した。1件あたりの平均被害額は6万2,604ドル(約970万円)だった。

またニューヨーク州司法長官府によると、米連邦取引委員会(FTC)に報告された2025年の暗号資産関連詐欺による被害額は17.8億ドル(約2,755億円)で、前年比25.6%増加したという。

ニューヨーク州司法長官府に寄せられた暗号資産詐欺に関する苦情も過去3年間で約3倍に増加しており、同州で過去5年間に報告された被害額は約5億ドル(約774億円)に上るとしている。

司法長官らが特に問題視しているのが、クラリティ法による州当局の規制・執行権限への影響だ。

書簡では、同法案が「適格取引(qualified transaction)」に関する新たな規定を通じ、SECに州の証券登録要件を連邦法で優先・排除する権限を間接的に与える可能性があると指摘。司法長官らは、この権限がデジタル資産だけに限定されず、SECが州の証券規制に対する連邦法の優先範囲を一方的に再設定できる広範な裁量につながる可能性があると主張している。

司法長官らによると、各州当局は2017年以降、暗号資産分野の詐欺を巡って330件を超える法執行措置を実施してきた。詐欺サイトや詐欺スキームの閉鎖、被害者への資金返還などに取り組んだほか、連邦当局による対応や民事上の救済手段が得られない被害者の案件も扱ってきたという。

こうした実績を踏まえ司法長官らは、デジタル資産がトークン化されているかどうかにかかわらず、証券に関する州当局の執行権限を維持するよう要求。また連邦政府と州政府の協力体制を維持するとともに、暗号資産規制における州の役割を法律上明確にし、暗号資産プラットフォームに州への登録・認証を求める既存制度を維持することを求めた。

さらに司法長官らは、法案に含まれる曖昧な文言についても、悪用につながる可能性があるとして明確化を求めている。

今回の書簡にはニューヨーク州のほか、アリゾナ州、カリフォルニア州、コネチカット州、デラウェア州、イリノイ州、カンザス州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ミネソタ州、ネバダ州、ニュージャージー州、オハイオ州、バージニア州、ワシントン州、ウィスコンシン州、およびワシントンD.C.の司法長官が署名している。

ジェームズ氏率いるニューヨーク州司法長官府は、これまで暗号資産企業を巡る複数の法執行措置を実施している。

2019年には暗号資産取引所ビットフィネックス(Bitfinex)とステーブルコイン「USDT」発行元テザー(Tether)を巡る調査で、ビットフィネックスが約8.5億ドル(約1,315億円)の顧客・企業資金へのアクセスを失い、その事実を隠すためテザーの準備金を利用していた疑いを公表。2021年には両社との和解を発表し、両社はニューヨーク州での取引を終了するとともに1,850万ドル(約28.6億円)を支払うことで合意した。

このほか同司法長官府は、コインカフェ(Coin Café)、ジェミナイ(Gemini)、ジェネシス(Genesis)、クーコイン(KuCoin)などに対する措置を通じ、投資家への返金や罰金を確保してきた。

また2026年4月には、暗号資産取引プラットフォームのアップホールド(Uphold)が「CredEarn」と呼ばれる投資商品を誤解を招く形で宣伝したとして同社と和解。被害を受けた投資家への500万ドル超(約7.7億円)の支払いを確保している。

クラリティ法を巡っては、暗号資産市場における米商品先物取引委員会(CFTC)とSECの管轄を明確化することなどを目的に議論が進められている。司法長官らは市場構造に関する連邦規制の整備自体ではなく、その過程で州当局の規制・執行権限が制限されることを問題視している。

参考:発表 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者