山陰合同銀行、NTTデータ・セキュリタイズと社債型ST発行を検討

証券口座の新設不要、ネットバンキング経由の投資を想定

山陰合同銀行、NTTデータ、セキュリタイズジャパン(Securitize Japan)の3社が、デジタル証券を活用した資金調達の本格検討を開始したと9月8日に発表した。3社は、地域企業や地方公共団体への展開を見据えている。

まず3社は、山陰合同銀行が社債型のセキュリティトークン(ST/デジタル証券)を発行し、投資家に直接販売する「自己募集」型の仕組みを検証する。STとは、ブロックチェーンなどを活用して発行・管理される有価証券のことだ。

山陰合同銀行によると、この発行・販売が実現すれば、地方銀行本体による社債型STの発行・販売として初の事例になるという。ただし、本取り組みの実施とSTの発行は関係当局への確認や同行内での決定を踏まえて判断される予定で、現時点では確定していない。

3社は、山陰合同銀行が利用するNTTデータの共同利用型システム「地銀共同センター」と、セキュリタイズのデジタル証券基盤「Securitize PF」を連携させたサービスの提供を目指す。

なお「あたらしい経済」編集部がセキュリタイズジャパンに取材したところ、採用ブロックチェーンは現時点で正式に決定していないとのことだ。

想定される仕組みでは、投資家は同行のインターネットバンキングから申し込み画面へ進み、証券口座を新設せずに小口・非対面で投資ができる。投資資金の払い込みや利金・償還金の受け取りにも、保有する銀行口座を利用する想定だ。

3社は、商品やシステムの設計、投資家管理、情報開示、販売、利払い・償還、法令対応などを検証する。3社は得られた知見を、地域企業の資金調達支援や自治体によるデジタル地方債の活用につなげる方針だ。

3社は将来的に、「地銀共同センター」を利用する他の地方銀行などへの展開も目指す。

今回の取り組みの背景には、地方債のデジタル証券化に向けた制度整備がある。5月27日に成立した第16次地方分権一括法には、デジタル証券方式での地方債発行を可能にする地方財政法の改正が含まれる。この規定は2027年4月1日に施行される。

なお山陰合同銀行は、2025年4月の社内コンテストで最優秀賞を受賞した「ごうぎんデジタルグリーンボンド」のアイデアを契機に、デジタル証券の活用を検討してきたという。

これまでの取り組みとして、山陰合同銀行と三菱総合研究所(MRI)は2024年5月29日、山陰地域でデジタル地域通貨事業を共同実施すると発表した。同事業では、MRIのブロックチェーンを活用したデジタル地域通貨サービス「リージョンリング(Region Ring)」を用い、地域内のポイントや通貨を発行・管理する基盤の構築を目指していた。

同年9月12日には、同行とMRIが、アルテミスビュースカイを加えた3社共同事業体による、島根県出雲市のデジタル地域通貨のシステム構築・運営業務の受託を発表した。同地域通貨基盤には、チェーントープ(chaintope)のブロックチェーン「タピルス(Tapyrus)」を採用すると、当時MRIは「あたらしい経済」編集部に説明していた。

またNTTデータとセキュリタイズジャパンは2025年4月18日、デジタル証券プラットフォームサービスの開始を発表した。第1弾の「社債購入者情報提供サービス」は、発行企業が社債購入者の情報を取得し、商品やポイントなどの特典を投資家へ直接付与できるようにするものだ。当時の取材でセキュリタイズジャパンは、同プラットフォームがクオーラム(Quorum)やイーサリアム(Ethereum)など、複数のブロックチェーンに対応すると回答している。

参考:山陰合同銀行NTTデータセキュリタイズJP内閣府資料
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。