ヴィタリック、SNARK・FHE・iOの計算コスト「将来10倍未満になる可能性60%」

SNARKのオーバーヘッド、2020年代末までに10倍未満となる可能性

イーサリアム(Ethereum)共同創業者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、SNARK、完全準同型暗号(Fully Homomorphic Encryption:FHE)、識別不能難読化(Indistinguishability Obfuscation:iO)の3技術について、将来的に通常計算の10倍未満のコストで実装できる可能性を60%と見積もった。同氏が9月6日に自身のXで述べた。

ブテリン氏は今回の予想を、暗号技術の遠い将来についての楽観的で、現時点では広く合意されていない個人的な見方だと位置付けている。

同氏によると、3技術すべてについて、現実世界で一般的に用いられる計算に対するオーバーヘッドを1桁台にできる可能性は60%だという。

ここでいう1桁台とは、暗号技術を適用した計算の総コストが、通常の計算の10倍未満になる水準を指す。総コストは、エネルギー費用と償却ベースの計算コストを合わせて測るとしている。

さらにブテリン氏は、十分に大規模な処理では、暗号技術の適用で生じる追加コストが元の計算に比べて限りなく小さくなる「1+ε倍」の水準を、3技術すべてで実現できる可能性も33%とした。

今回示された60%と33%の見通しには、具体的な実現期限は設けられていない。

一方、より近い将来についてブテリン氏は、2020年代末までに3技術のうち少なくとも1つが10倍未満の水準に達する可能性は高いと予想。なかでもSNARKが最有力だとの見方を示した。

また、専用化されたハッシュ関数や一部のLLM推論を対象とするSNARKでは、すでに10倍未満のオーバーヘッドを実現していると同氏は指摘した。

今回のX投稿では「SNARK」と表記されているが、ブテリン氏は2024年のブログでは、3技術の一つとして「ZK-SNARK」を挙げている。

ZK-SNARKは、計算に用いた秘密データを明かすことなく、その結果の正しさを短い証明で効率的に検証できるゼロ知識証明の一種だ。FHEは、データを復号することなく、暗号化した状態のまま計算できる技術だ。

iOは、プログラムの機能を維持したまま内部ロジックを難読化する技術だ。正式には、同じ機能を持つ2つのプログラムをそれぞれ難読化した場合に、その結果を計算上区別できない性質を指す。

ブテリン氏は、これら3技術を『遊☆戯☆王』に登場する強力な3枚のカード「三幻神」になぞらえ、「エジプシャン・ゴッド・プロトコル(Egyptian God Protocols)」と呼んでいる。同氏が2024年10月のブログで説明していた。

ただし、3技術の成熟度には大きな差がある。特にiOについてブテリン氏は2026年6月のブログで、比較的標準的な安全性仮定に基づく保守的な方式は、推定実行時間が宇宙の寿命を超えるほど非効率だと説明している。

画像:istocks/LuckyStep48

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。