ウィンターミュートUSA、SEC登録ブローカーディーラーに。トークン化証券市場見据え

暗号資産取引から米規制証券市場へ事業拡大

暗号資産(仮想通貨)のアルゴリズム取引やマーケットメイキングを手がけるウィンターミュート(Wintermute)の関連会社「ウィンターミュートUSA(Wintermute USA LLC)」が、米証券取引委員会(SEC)にブローカーディーラー登録され、金融業規制機構(FINRA)への会員登録を完了した。ウィンターミュートが8月6日に発表した。これによりウィンターミュートUSAは、米国の規制市場へ正式に事業を拡大するとのことだ。

ウィンターミュートは主に、暗号資産市場でアルゴリズム取引やOTC取引を手がけてきた。今回の登録により、ウィンターミュートUSAは自己勘定に限り、米国の規制市場で株式や株式オプションを取引できるほか、全米証券取引所やOTCの取引相手へ流動性を提供できるようになるとのことだ。

ブローカーディーラーとは、顧客のために証券売買を仲介したり、自社の勘定で証券を業として売買したりする事業者だ。米国では原則としてSECへの登録やFINRAへの加盟が必要となる。FINRAは、SECの監督下でブローカーディーラーの監督や会員登録、規則執行などを担う自主規制機関だ。

なお、ウィンターミュートUSAの事業は自己勘定取引とETP関連サービスに限定され、一般顧客の注文を取り次ぐ証券仲介を行うものではない。

ETP指定参加者やデジタル資産証券の自己清算にも対応

今回のSEC登録とFINRA加盟により、ウィンターミュートUSAは、デジタル資産に連動する商品を含むETPについて、自己勘定でAPを務めることが可能になった。なお、個別のETPで実際にAPとして設定・償還を行うには、発行体側との契約が必要となる。

指定参加者(AP)は、ETFなどの設定や償還を発行体との間で直接行う金融機関や証券会社などを指す。市場へのETFの供給や償還を担い、商品の流動性や市場価格の形成を支える役割を担う。

またウィンターミュートUSAは、自己勘定によるデジタル資産証券取引について、自社で清算を行えるようになるとのことだ。自社清算とは、証券取引成立後に取引内容を確認し、証券や資金の受け渡しに必要な債権・債務関係を整理する清算処理を、他社へ委託せず自社で行うことを指す。

ウィンターミュートは今回の登録について、米国の規制市場における機関投資家向け事業拡大の重要な節目と位置付けた。また、今後のトークン化証券市場を見据えた戦略的な基盤になると説明した。

なおウィンターミュートは2025年9月、SECの暗号資産タスクフォース向けに提出した文書で、トークン化証券を取り扱うブローカーディーラー向けの規制明確化を求めていた。今回のウィンターミュートUSAの登録は、同社が以前から示していたトークン化証券市場への対応方針ともつながる動きとなる。

GSRなど暗号資産企業でも米規制基盤の整備進む

なお、暗号資産企業が米国の証券規制に対応した事業基盤を整備する動きは今年に入り相次いでいる。6月には暗号資産キャピタルマーケット企業GSRが、FINRAの承認を経てSEC登録ブローカーディーラーの買収を完了した。GSRは、同ブローカーディーラーを通じて米国の機関顧客向け支援や資本調達支援を拡大する方針を示している。

また、現実資産(RWA)のトークン化を手がけるセキュリタイズ傘下のブローカーディーラー、セキュリタイズ・マーケッツ(Securitize Markets)は5月、トークン化証券のカストディやアトミック決済などに対応するFINRA承認を取得した。オンド・ファイナンス(Ondo Finance)傘下のオアシス・プロ・マーケッツ(Oasis Pro Markets)も7月、トークン化証券の新規発行や流通取引に対応するため、FINRAから新たな認可を取得している。

GSRは機関顧客向け証券事業の拡大を進めている。一方、セキュリタイズやオンドはトークン化証券市場向けインフラの整備を進めており、それぞれ事業内容は異なる。ただし、暗号資産企業が米国の証券規制に対応した事業基盤を整え、デジタル資産市場と証券市場をまたぐ事業展開を進める動きは共通している。

参考:ウィンターミュートSEC 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。