トロン、ポスト量子署名機能をテストネットへ導入。開発者向け試験運用を開始

ポスト量子署名機能をテストネットで有効化

レイヤー1ブロックチェーン「トロン(TRON)」を支援するトロンDAO(TRON DAO)が、ポスト量子署名機能をテストネット「ナイル(Nile)」へ導入した。同プロジェクトの創設者ジャスティン・サン(Justin Sun)氏のXアカウントで7月3日に発表された。これにより、開発者は同機能を利用した開発や検証を試験環境で開始できるようになった。

今回の導入により、開発者はポスト量子署名機能を実際に試験できるようになった。具体的には、ポスト量子ウォレットを作成し、ポスト量子署名を利用したトランザクションの送信や署名検証などを行えるという。一方、今回有効化されたのはテストネットのみであり、メインネットには導入されていない。

ポスト量子署名とは、将来的な量子コンピュータ時代でも安全に取引を行えるようにするための技術だ。現在広く利用されている署名方式は、量子コンピュータによって解読される可能性が指摘されている。そのため、新たな署名方式への移行を目的としている。

現在、トロンを含む多くのブロックチェーンでは楕円曲線暗号を利用した署名方式「ECDSA(secp256k1)」が採用されている。一方、トロンDAOは、量子コンピュータの発展によって将来的に現在の署名方式が脅威にさらされる可能性があるとの認識を示している。

今回の導入は、ナイルテストネットで委員会提案第20628号が可決されたことで実現した。同提案は7月2日12:10(シンガポール時間)に可決され、ナイルテストネットではポスト量子署名機能が正式に有効化された。最初に有効化された署名方式は「FN_DSA_512(FN-DSA-512/Falcon-512)」だ。

なお、ナイルテストネットのv4.8.2-PQ1では、FN_DSA_512に加えて「ML_DSA_44(ML-DSA-44/Dilithium-2)」もサポート対象として実装されており、各方式は委員会提案により個別に有効化される設計となっている。

トロンDAOは、既存のサービスやウォレットへの影響をできるだけ抑えながら、量子耐性へ移行できる設計を採用したと説明している。具体的には、既存のアカウント構造やエコシステムとの互換性を維持したまま導入を進める方針だという。またメインネット導入に向けては、トロン改善提案(TIP)での議論に加え、外部の暗号・実装監査やSR(スーパー代表)によるオンチェーン投票などが必要になる。

なお、量子コンピュータへの対応を巡っては、トロン以外のブロックチェーンでも研究が進められている。例えばイーサリアム(Ethereum)では、ポスト量子暗号対応のロードマップや、アカウント抽象化を通じた署名方式の移行、耐量子署名の検証方式に関する研究が進められている。また、イーサリアム研究コミュニティでは、SPHINCS+をEVM向けに最適化した研究段階の署名方式「SPHINCS-(スフィンクスマイナス)」なども提案されている。

参考:ブログ1ブログ2
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。