ヴィタリック、イーサリアム財団の方向性説明 「より小さく長期志向の組織へ」

ヴィタリック、イーサリアム財団の方向性示す

イーサリアム(Ethereum)共同創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)の今後の方向性について、自身のXアカウントで5月25日にその考えを示した。

今回のブテリン氏の投稿は、イーサリアム財団主要メンバーの離脱や、財団運営を巡るコミュニティ内の批判が続くなかで公開されたものだ。

分散型金融(DeFi)系リサーチャーのイグナス(Ignas)氏によると、イーサリアム財団では1ヶ月以内に少なくとも5人の主要メンバーが離脱や役割変更を公表しているという。

実際に、イーサリアム財団は5月11日、プロトコルクラスター(Protocol Cluster)の新体制を発表し、バーナベ・モノ(Barnabé Monnot)氏とティム・ベイコ(Tim Beiko)氏が近く財団を離れ、アレックス・ストークス(Alex Stokes)氏が研究休暇に入ると説明している。また、リーダーシップチームに所属していたジョシュ・スターク(Josh Stark)氏や、資金調達・ネットワークアップグレードに関わっていたトレント・ヴァネップス(Trent Van Epps)氏らも離脱を公表している。

また、暗号資産(仮想通貨)メディア「ディクリプト(Decrypt)」によると、今年3月に公開されたイーサリアム財団の方針を示した新マンデート(Mandate)文書も議論を呼んでいるという。同文書では、「CROPS(検閲耐性・オープンソース・プライバシー・セキュリティ)」を重視する方針が示された一方、一部コミュニティからは、思想性の強さや特定のNFTプロジェクトとの近さを懸念する声も出ていた。

さらに、元イーサリアム財団研究者ダンクラッド・ファイスト(Dankrad Feist)氏は今月21日に、ETH価格やイーサリアム経済圏と経済的に整合した組織が必要だと提言している。同氏は、ETH価格上昇を望む理事会や恒久的な資金供給モデルを備えた新組織の必要性を訴えており、イーサリアム財団の現在の立ち位置を巡る議論も強まっている。

コミュニティ内では、こうした動きを受け、イーサリアム財団の組織体制や方向性を巡る議論が強まっていた。

こうした状況についてブテリン氏は、「イーサリアム財団はイーサリアム(Ethereum)の中心ではなく、明確な役割を持つ1つのノードであるべきだ」と説明している。つまり、同財団はイーサリアムの中心ではなくコミュニティの一部として役割を担うべきとの考えを示した形だ。また、自身の財団内での影響力についても、「今後さらに小さくなっていくが、それは自分が望んでいることだ」と述べた。

ブテリン氏は、イーサリアム財団は今後、「活動範囲の広さ」より「長期存続」を優先する方針を取るべきだという。そのため、同財団の活動範囲を絞り込み、イーサリアムにとって不可欠な領域へ集中するべきだと説明している。

具体的には、「検閲や権力集中への耐性」「オープン性」「プライバシー」「安全性」といったマンデートで示された「CROPS」の価値観の実現を重視するべきとのこと。また、「高速性だけを追求することは平凡化への道だ」とも述べ、イーサリアムは単純なTPS競争だけを重視するべきではないとの姿勢も示した。

技術面では、「AI支援による形式検証」、「非同期環境でも高い耐障害性を持つコンセンサス」、「トランザクション仲介者への依存削減」などを重要課題として挙げている。

さらにブテリン氏は、イーサリアム財団が保有するETHは全供給量の約0.16%に過ぎず、「永続的な中央管理組織として設計されたわけではない」と説明した。その上で、自身の純資産の約90%がETHで構成されていることも明かしている。

最後にブテリン氏は、主要メンバー離脱を受け「イーサリアム財団は以前より小さな船になるだろう」と述べた。一方で、財団がイーサリアム全体を管理する巨大組織ではなく、役割を限定した長期志向の組織へ移行することで、「より長期的に存続する組織になる」との考えを示している。

参考:イグナス(X)ディクリプトダンクラッド・ファイスト(X)
画像:大津賀(あたらしい経済)

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。