香港、暗号資産ディーラーとカストディ業者のライセンス制度導入へ

VAの助言・運用サービスは追加コンサルへ

香港の財経事務及庫務局(FSTB)と香港証券先物委員会(SFC)が、暗号資産(仮想資産:VA)ディーリング業者およびカストディ業者を対象としたライセンス制度に関する立法提案のコンサルテーション結果を12月24日に公表した。

あわせて、暗号資産のアドバイザリーおよび運用サービス提供者を対象とする新たなライセンス制度について、1か月間の追加パブリックコンサルテーションも開始している。

今回のコンサルテーションは2025年8月に完了した2か月間実施され、VAディーリング業者向け制度には101件、VAカストディ業者向け制度には93件の意見提出があった。市場参加者や業界団体、事業・専門組織などを含む回答者の大多数は、2023年6月に導入された仮想資産取引プラットフォーム(VATP)のライセンス制度に続き、規制対象をディーリングおよびカストディサービスまで拡大する方針を支持したという。

FSTBとSFCによると、VAディーリング業者向けライセンス制度は、既存の証券規制である証券先物条例(SFO)におけるタイプ1(証券取引)規制と整合させる設計となる。一方、VAカストディ業者については、顧客資産の保全、とくに顧客VAの秘密鍵保管に伴うリスク管理に重点を置いた制度とし、顧客資産の安全性向上を図る。

金融サービス・財務長官のクリストファー・ホイ(Christopher Hui)氏は、「VAディーリングおよびカストディ業者のライセンス制度整備は、香港のデジタルアセットに関する法制度を強化する重要な一歩だ。市場発展、リスク管理、投資家保護のバランスを取りつつ、信頼性と持続可能性を備えたデジタルアセット・エコシステムの構築を目指す」とコメントした。

またSFCのCEOであるジュリア・リャン(Julia Leung)氏は、「責任あるイノベーションへのコミットメントのもと、競争力がありつつも強靭な仮想資産市場の基盤を整えることで、香港の金融市場と経済全体に長期的な恩恵をもたらす」と述べている。

さらに当初案に対する意見を踏まえ、FSTBとSFCは、VAディーリング業者の枠組みに含める予定だったVA助言およびVA運用サービスについて、別個のライセンス制度として設計する方針に変更した。これは従来の証券市場における規制体系をモデルとしたもので、規制対象となる業務範囲の明確化を目的としている。追加コンサルテーションは2026年1月23日まで実施される。

両機関は市場からの幅広い支持を背景に、追加コンサルテーションの結果も踏まえて制度設計を最終化し、2026年に関連法案を立法会へ提出することを目指すとしている。

暗号資産に友好的な姿勢で知られる香港は、VATPのライセンス制度などを通じて、デジタルアセット分野の「ハブ化」を掲げている。

2025年2月にSFCが公表した「A-S-P-I-Re(ASPIRe)ロードマップ」では、ステーキングを含む商品・サービス拡充などが打ち出されている。

また2025年8月にはSFCが、VATPにおける顧客VAのカストディ実務(保管・管理)について、期待される基準を詳述した文書を公表した。

同文書では、経営陣の責任、顧客資産のコールドウォレットのインフラと運用、第三者ウォレットソリューションの利用、リアルタイムの脅威監視などを含む、最低限遵守すべき基準を示している。

参考:発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者