北朝鮮ハッカー資金洗浄網に米制裁
米財務省外国資産管理局(OFAC)が、北朝鮮(DPRK)のサイバー犯罪やIT労働者詐欺に関与し、得られた資金を洗浄していたとして、個人8名と2団体を新たに制裁対象に指定したと11月4日発表した。
制裁対象となったのは、OFACが既に指定しているファースト・クレジット銀行の資金を管理していた北朝鮮の銀行家、チャン・ククチョルとホ・ジョンソンだ。両名は約530万ドル(約8億円)相当の暗号資産を含む資金管理を支援していたという。その資金の一部は過去に米国内の被害者を狙った北朝鮮のランサムウェア攻撃グループに関連している可能性があるという。
また、北朝鮮のIT企業万景台コンピューター技術会社(KMCTC)も制裁対象になった。この会社は、中国・瀋陽や丹東を拠点にIT労働者を派遣し、中国人名義の銀行口座を利用して資金の出所を偽装していたという。併せて、KMCTCの現社長であるウ・ヨンスも指定されている。
また、OFACは、北朝鮮の金融機関が中国やロシアなどに拠点を置き、国際的な市場アクセスを確保して不正資金を洗浄していると指摘。今回の制裁には、竜城信用銀行(Ryujong Credit Bank)のほか、複数の駐在員も含まれる。
制裁対象として発表されたのは、ホ・ヨンチョル、ハン・ホンギル、ジョン・スンヒョク、チェ・チュンポム、リ・ジンヒョクだ。これらの人物は、米国が既に指定している朝鮮大成銀行(Korea Daesong Bank)や柳京商業銀行(Ryugyong Commercial Bank)などを代表し、63万〜8,500万ドル(約9,671万~約130.4億円)規模の米ドルおよび人民元の資金移転を支援していたという。
過去3年間で30億ドル超の暗号資産が標的に
ジョン・K・ハーリー財務次官(テロ対策・金融情報担当)は声明にて、北朝鮮国家が支援するハッカーは、核兵器計画の資金調達のために資金を窃取・洗浄しているとし、「平壌の兵器開発に収益をもたらすこれらの行為は、米国及び国際社会の安全保障を直接脅かす。財務省は、北朝鮮の違法な収益源を断つため、これらの計画の背後にある仲介者・支援者を引き続き追及する」とコメントしている。
米国は10月に発表された多国間制裁監視チーム(MSMT)の報告書を引用し、北朝鮮が海外のIT労働者を利用して国連制裁を回避している実態を再び警告。過去3年間で北朝鮮関連のハッカーは暗号資産を中心に30億ドル(約4,606億円)超を盗み、高度なマルウェアやソーシャルエンジニアリングといった洗練された手法を頻繁に利用しているという。
今回の指定により、米国内または米国人の管理下にある関連資産は全て凍結され、米国人や米企業がこれらの個人・団体と取引することは原則禁止される。
OFACは「制裁の目的は罰ではなく、行動の変化を促すことにある」とし、対象者が法的手続きを経て制裁解除を求めることも可能としている。
参考:発表
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