グーグルクラウド、金融機関向け暗号資産カストディ基盤「MPC」をプレビュー提供

秘密鍵を分散管理、金融機関の暗号資産保管を支援

米グーグル(Google)のクラウド事業部門グーグルクラウド(Google Cloud)が、金融機関などの暗号資産(仮想通貨)の保管・管理を支援する基盤「マルチパーティ・コンピュート(Multi-party Compute:MPC)」をプレビュー提供していることが分かった。10月29日時点の公式ドキュメントで確認できる。

10月28日付の米暗号資産メディア「コインデスク(CoinDesk)」によると、グーグルは同メディアの取材に対し、MPCを2027年初頭に商用提供する計画を明らかにした。現在は対象を限定した非公開プレビュー段階で、複数の大手金融機関や開発協力先がテストしているという。参加機関の名称や料金は公表されていない。

また「コインデスク」によると、親会社アルファベット(Alphabet)も、イーサリアム(Ethereum)とソラナ(Solana)上の自社デジタル資産の保護にMPCの利用を開始している。対象資産の詳細は明らかにされていない。

MPCは、デジタル資産の移転に用いる署名鍵を管理するプラットフォームだ。複数の参加者による共同署名や取引内容の評価、組織内の権限管理を組み合わせ、金融機関などによるカストディ体制の構築を支援する。

同サービスでは、秘密鍵に相当する情報を「キーシェア」として複数の参加者が分散管理する。事前に定めた数の参加者が協力して署名を生成する仕組みで、完全な秘密鍵を1か所に集めることなく、ブロックチェーン上の取引に署名できるという。

グーグルクラウドによると、攻撃者が侵害した参加者の数が署名に必要な数に達しなければ、不正な署名の生成や秘密鍵の復元はできない。また、一部の参加者が利用できなくなっても、必要な数の参加者が残っていれば署名を継続できるとのことだ。

導入企業は、キーシェアを保有する担当者やチーム、署名に必要な人数、キーシェアの保管先を設定できる。保管先にはグーグルクラウドのほか、顧客の施設内や利用者のモバイル端末が挙げられている。

また「コインデスク」によるとグーグルは、鍵に関する情報の管理権限は顧客が保持し、自社インフラに保管するキーシェアにも暗号化されていない状態ではアクセスできないと説明している。

対応するブロックチェーンとして、公式ドキュメントにはビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム、イーサリアム仮想マシン(EVM)互換チェーンが記載されている。アルファベットによるソラナ上での利用が報じられる一方、公開ドキュメントではソラナは「対応予定(coming soon)」とされている。

現在は一般提供前のプレビュー段階で、サポートが限定される場合がある。グーグルクラウドは、機関向けビットコインカストディの公式解説資料も公開しており、単一の秘密鍵を管理する既存サービスと、キーシェアを分散管理するMPCの違いなどを説明している。

なお、公式リリースノートには8月20日以降の更新履歴が記載されている。10月1日には、ビットコイン取引の金額評価、送金先アドレスの種類の分類、送金者に戻る「お釣り」の出力の自動検出など、取引内容を評価する機能が拡充された。

参考:コインデスク・Google Cloud「Multi-party Compute documentation」・Google Cloud「Multi-party Compute overview」・Google Cloud「Institutional Bitcoin custody on Google Cloud」・Google Cloud「Multi-party Compute release notes」
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。