Sui、デブネットで初の耐量子取引に成功。追加ガス代なしで利用可能に

スイの耐量子暗号対応がデブネットで実現

レイヤー1ブロックチェーン「スイ(Sui)」の開発者向けネットワーク「デブネット(Devnet)」で、耐量子暗号を使った初の取引処理が成功した。スイ主要開発企業ミステン・ラボ(Mysten Labs)の共同創業者で、チーフ・クリプトグラファー(暗号技術責任者)を務めるコスタス・チャルキアス(Kostas Chalkias)氏が、10月13日に報告した。今回の取引には、量子コンピューターによる攻撃への耐性を持つデジタル署名方式「ML-DSA-65」が使用されたという。

今回の取引は、10月12日に公開されたデブネットのバージョン「v1.82.0」で実行されたものだ。同バージョンでは、通常のアカウントが取引を承認する際の署名方式として、従来の方式に加えてML-DSA-65が導入された。ただし、現時点では新機能の開発・試験に使われるデブネット限定の対応であり、本番ネットワークのメインネット(Mainnet)では利用できない。また、チャルキアス氏は10月8日、自身のXアカウントで、耐量子署名方式を選択しても、通常の取引手数料に加えて追加のガス代が発生することはないと説明した。

ブロックチェーンでは、利用者が秘密鍵を使って取引にデジタル署名を行い、その署名を検証することで、正当な権限を持つ利用者による取引かどうかを確認している。現在、多くのブロックチェーンでは楕円曲線暗号を利用した署名方式が採用されている。しかし、将来的に十分な性能を持つ量子コンピューターが実現した場合、公開鍵から秘密鍵を復元され、不正な取引に利用される可能性が指摘されている。

こうしたリスクへの対応として、スイを支援するスイ財団(Sui Foundation)は8月6日、耐量子暗号への対応計画を発表していた。同計画では、通常のアカウント向けにML-DSA-65を、高価値資産を保管するスマートコントラクト型のボールト(Vault)向けに「SLH-DSA-SHA2-128s」を採用する方針が示された。ML-DSA-65は、米国立標準技術研究所(NIST)が標準化した耐量子署名方式だ。

ミステン・ラボが公開したギットハブ(GitHub)の情報によると、今回の実装では、ML-DSA-65を使った取引の署名と検証に加え、複数の署名を組み合わせて取引を承認する「マルチシグ」にも対応した。マルチシグは、企業などが複数の担当者による承認を必要とする資産管理にも利用される仕組みだ。今回の対応により、従来の署名方式とML-DSA-65を組み合わせた認証も可能になった。さらに、開発者向けツールにも同方式への対応が追加された。

今後、スイ財団はML-DSA-65を利用するアカウントを今年末までにテストネット(Testnet)へ導入し、2027年第1四半期にはメインネットで同方式によるアカウント認証に対応することを目指している。テストネットは、本番導入に向けて機能や動作を検証するためのネットワークだ。なお、独立したセキュリティ監査やテストネットでの検証状況によって、導入時期が変更される可能性があるとのことだ。

参考:GitHub1・GitHub2
画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。