ESMA、2027年計画を公表。MiCA監督統一や暗号資産監視「MIDAS」第2段階へ

MiCA下でEU各国のCASP監督実務の統一進める

欧州証券市場監督局(ESMA)が、「2027 Annual Work Programme(2027年年次作業計画)」を9月28日に公表した。

同計画では、EU(欧州連合)の暗号資産(仮想通貨)規制「MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)」の下での暗号資産サービス提供者(CASP)に対する監督実務の統一や、暗号資産の市場監視システム「MIDAS」の次段階への移行、トークン化がEU金融市場に与える影響の評価などが重点項目に掲げられた。

ESMAは2027年について、これまでの分析や準備から「実施と具体的な成果」へ移行する年と位置付けている。

MiCAに関する取り組みでは、ESMAがEU各国の監督当局によるCASP監督の実務をそろえる方針だ。重点分野には、CASPのデジタル・オペレーショナル・レジリエンス、EU域内での事業実体やアウトソーシングリスク、暗号資産市場の流動性、リバース・ソリシテーション、資産分類などが含まれる。

また、CASPが各国当局に提出する定期報告の調和も推進する。

同計画のマネーロンダリング対策(AML)に関する取り組みでは、ESMAがEUのマネーロンダリング対策庁(AMLA)と連携し、CASPによるAML・KYC(本人確認)義務の順守について協力する。

暗号資産の分類については、ESMAが欧州銀行監督局(EBA)や欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)とも協力する。

さらに、MiCAに基づくホワイトペーパーに関する移行期間が2027年12月31日に終了することから、ESMAは同計画で、この期限に向けた監督上の準備を進めるとしている。

このホワイトペーパーの移行措置は、MiCA第143条第2項に定められている。対象は、2024年12月30日より前に取引が認められた暗号資産のうち、資産参照トークンと電子マネートークンを除くものだ。対象の暗号資産を扱う取引プラットフォーム運営者は、期限までに、必要なホワイトペーパーの作成・通知・公表・更新を確保する必要がある。

ESMAは今回の計画で、CASPの認可・監督実務に関して2025年に出した勧告について、2027年に実施状況を確認し、フォローアップを行うとしている。

この勧告は、マルタ金融サービス庁(MFSA)によるCASP1社の認可・監督実務を短期間で検証した「ファストトラック・ピアレビュー」に基づくものだ。ESMAは他の監督当局の専門家らと検証を行い、利益相反や企業統治、ITシステムなどのリスク評価を徹底するよう、EU各国の監督当局に勧告した。

また今回の計画では、2026年6月に開始したCASPのカストディサービスのデジタル・オペレーショナル・レジリエンスに関する共通監督行動(CSA)について、2027年第4四半期に最終報告書を公表する予定だ。

MIDAS第2段階へ

MIDASは、ESMAがEU各国の監督当局による暗号資産市場の不正監視を支援するために整備している中央集約型システムだ。同計画によると、第1段階が2027年までに完全稼働する見込みだ。

ESMAは理事会の承認を条件として、2027年第4四半期に第2段階を展開する予定だ。新たな分析機能を追加し、システムで扱うデータの種類も拡大する。

トークン化の影響評価も強化

ESMAは同計画で、トークン化を重点分野の一つに位置付け、2027年にEU金融市場に与える影響の評価を強化する。

分散型台帳技術(DLT)分野では、ESMAがEUの「DLTパイロット制度」における適用免除や認可条件の運用を引き続き監視する。

また、トークン化に伴う監督・規制上の課題として、相互運用性、精算の仕組み、カストディ、法的確実性などを検証し、今後予定されるDLTパイロット規則の見直しなどに反映する方針だ。

AIや予測市場への対応も計画に

同計画では、個人投資家分野でのAIやトークン化などの技術革新を対象とした新たなEU全体の戦略的監督優先事項(USSP)を2027年に開始する。

投資サービス分野の計画には、イベント契約(予測市場)についてEU各国の監督実務をそろえるための議論も盛り込まれた。

その他の2027年計画と予算案

このほか、同計画には、2027年10月11日に予定されるEU証券決済のT+1移行や、ESG格付け会社に対する監督の本格化、取引報告やファンド報告の重複を減らす「report-once」型の枠組みの整備も盛り込まれている。

同計画に添付されたESMAの2027年予算案は約9,715万ユーロ。人員計画では、臨時職員278ポスト、契約職員100人相当、各国からの出向専門家35人相当を見込む。

参考:発表
画像:iStocks/PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者