ECBとEU各国の中銀、ステーブルコイン準備資産の銀行預金保有義務撤廃を提言

EUでステーブルコイン準備資産の銀行預金保有義務撤廃を提言

欧州中央銀行(European Central Bank:ECB)と欧州連合(EU)の他の中央銀行が、ステーブルコイン発行者に対し、準備資産の一定割合以上を銀行預金で保有する義務を課すべきではないとの見解を9月22日に示した。銀行がステーブルコインの取り付け騒ぎの影響を受け、預金の安定性も低下する恐れがあるためだ。

ECBとEU加盟27カ国の中央銀行で構成される欧州中央銀行制度(European System of Central Banks:ESCB)は、「MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)」に関する意見募集への回答でこうした見解を示した。MiCAは、2024年12月30日に全面適用が始まった、EU全域に適用される暗号資産(仮想通貨)規則だ。ステーブルコイン関連規定は、同年6月30日に先行して適用された。

ステーブルコイン発行者は、準備資産の少なくとも30%を銀行預金で保有することが義務付けられている。MiCA上「重要」と分類されるステーブルコインでは、この最低比率が60%となる。

しかし、各中央銀行は、MiCAを改正してこの要件を撤廃し、代わりに1営業日以内と5営業日以内にそれぞれ満期を迎える資産の最低保有比率を定めるよう提言した。

各中央銀行は文書で、「準備資産が銀行預金として保有される場合、ステーブルコインは銀行の資金調達構造を変化させる可能性がある。比較的安定した個人預金が、ステーブルコイン発行者からの預金に置き換わるためだ。発行者からの預金は安定性が低く、市場環境の影響を受けやすい傾向がある」と指摘した。

規制当局や金融安定を監視する機関は以前から、ステーブルコインを通じて暗号資産市場の問題が金融システム全体へ波及し、金融の安定を損なう恐れがあると警告してきた。ステーブルコインは通貨に価値を連動させた暗号資産の一種で、通常は米ドルに連動する。

複数発行のリスクとMiCAの執行上の課題

各中央銀行はまた、ステーブルコインの「複数発行(multi-issuance)」モデルが金融安定上のリスクをもたらし、現行規則では認められないとする欧州システミックリスク理事会(European Systemic Risk Board:ESRB)の見解を、改めて強く支持した。このモデルでは、世界で事業を展開するステーブルコイン企業が、EU域内で発行したトークンと域外で発行したトークンを相互に代替可能なものとして扱う。

各中央銀行は、将来、複数発行が認められる場合には、MiCAを改正し、「包括的な安全策の枠組み」を盛り込むべきだとした。各中央銀行は、そうした安全策として、他国のステーブルコイン規制をEUの規制と同等とみなせるかどうかの評価も挙げた。

米国では昨年、ステーブルコインの規制制度を設ける法律が署名され、成立した。一方、米上院では9月15日、暗号資産関連法案「クラリティ法案(Clarity Act)」の審議入りに向けた動議が必要な賛成票を得られず、同法案の審議は進まなかった。

MiCAでは、既存の暗号資産サービス提供者に対する移行措置が、最長でも2026年7月1日に終了した。対象事業者は、それまでに必要な認可を取得するか、域内での対象サービスを終了する必要があった。

各中央銀行は、欧州の規制当局がMiCAの執行で「重大な課題」に直面していると指摘した。EUの要件に適合しない暗号資産やステーブルコインに類する仕組みが、域内で引き続き利用できる状況にあり、投資家保護上の懸念が生じているという。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
ECB, EU central banks suggest dropping stablecoin deposits rule
(Reporting by Elizabeth Howcroft in Paris; Editing by Tommy Reggiori Wilkes, Kirstin Ridley and Toby Chopra)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)

画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。