レイヤーゼロ、量子耐性技術「Akita」開発 、ZK証明の小型化へ

「Jolt」に導入予定、ブロックチェーン「Zero」の量子耐性強化へ

レイヤーゼロラボ(LayerZero Labs)が、量子耐性に対応するZK証明向けの暗号技術「アキタ(Akita)」の開発を9月9日に発表した。あわせて同社は、アキタの技術論文とソースコードを公開した。レイヤーゼロラボは、ブロックチェーン相互運用プロトコル「レイヤーゼロ(LayerZero)」の開発元だ。

アキタは、ゼロ知識証明(ZK)の証明システムで使われる「多項式コミットメント方式(Polynomial Commitment Scheme:PCS)」の一種だ。PCSは、計算記録を表す数式を後からすり替えられない形で固定し、その数式に関する主張を検証する仕組みを指す。

アキタには、「格子」と呼ばれる数学的構造を利用する方式が採用されている。量子耐性を持つ証明システムでは、これまでハッシュ関数を使う方式が広く利用されてきた。アキタでは格子ベースの方式を使い、証明データの小型化と処理の効率化を図る。

レイヤーゼロラボによると、アキタはハッシュベースの量子耐性方式との比較で、用途に応じて証明データのサイズを2分の1〜8分の1に削減できるという。

最初の主要な導入先には、レイヤーゼロラボがa16zクリプト(a16z crypto)と共同開発するZK仮想マシン(zkVM)「ジョルト(Jolt)」が予定されている。ジョルトは、ブロックチェーン「ゼロ(Zero)」の証明基盤を担う。

公開論文では、従来のPCS「ドリー(Dory)」を使うジョルトとの比較結果も示された。論文に記載されたベンチマークでは、アキタを組み込んだジョルトは証明生成が1.3〜2.2倍、検証が2.2〜7.4倍高速化したという。

アキタのソースコードは、開発プラットフォーム「ギットハブ(GitHub)」で公開されている。

なおゼロは、計算の実行と検証を分離する設計のブロックチェーンだ。バリデーターは、同じ計算を再実行する代わりにZK証明を検証することで、処理の正しさを確認する。

レイヤーゼロラボは、アキタをゼロ全体の量子耐性確保に向けた最初の重要な段階と位置付けている。メインネットの稼働前後を通じて、追加の開発を続けるとしている。また公開論文では、量子コンピューターを想定したモデルでの追加の安全性解析が今後の課題として挙げられている。

レイヤーゼロラボは8月25日、ゼロ上に構築する取引所基盤「アトラス(ATLAS)」のローンチ計画も発表していた。アトラスは、注文照合、清算、決済、リスク管理を一体化した、取引サービス事業者向けのバックエンド基盤だ。年内のローンチが予定されている。

アトラスでは、暗号資産(仮想通貨)関連サービス向けと金融機関・取引所向けの2種類の取引環境を提供する計画だ。現物や無期限先物、株式、商品、債券、予測市場などを対象としている。

またレイヤーゼロラボは5月20日、分散型金融(DeFi)プロトコル「ケルプDAO(KelpDAO)」のリステーキングトークン「rsETH」のブリッジで発生した不正流出について、詳細な調査報告を公開していた。同事案は4月18日に発生し、11万6,500rsETHが流出した。

報告によると、攻撃者はブロックチェーンの状態を取得するRPCノードの応答を改ざんし、レイヤーゼロラボのDVN(分散型検証ネットワーク)に、偽のクロスチェーンメッセージへの有効な証明を生成させた。レイヤーゼロラボは、自社のDVNだけが必須の証明者となる構成では署名を拒否する運用方針への変更と、侵害されたクラウド環境の再構築を明らかにしていた。

参考:レイヤーゼロ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。