FRB、フィンテック・暗号資産企業向け「限定決済口座」提案。Fed決済網へのアクセス拡大へ

FRBがフィンテック・暗号資産企業向けの決済口座を提案

米連邦準備制度理事会(FRB)は5月20日、フィンテック企業などが、伝統的な銀行に認められているすべての安全網を利用することなく、米連邦準備制度(Fed)の決済網を通じて資金を移動できるようにする、より限定的な新たな決済口座の導入を提案した。

FRBは声明で、提案された口座には、日中与信やFedのディスカウント・ウィンドウ(連銀貸出制度)へのアクセスは含まれず、企業がFedに預ける準備残高に利息が付くこともないと説明した。

フィンテック企業や暗号資産(仮想通貨)関連企業はここ数年、Fedのマスター口座へのアクセスを求めてきた。Fedのマスター口座は、しばしば「銀行のための銀行口座」に例えられ、口座保有者がFedの決済網を通じて直接資金を移動できるようにするもので、取引の迅速化やコスト削減につながる。

一方、こうした業界は銀行側から強い抵抗を受けてきた。銀行側は、規制が比較的緩い暗号資産企業やフィンテック企業にFedの決済網への直接アクセスを認めれば、業務運営上のリスクや流動性リスクが生じる可能性があると長らく主張してきた。フィンテック企業が勢いを増せば銀行側は不利益を被る立場にあるものの、一部の規制専門家は、銀行側の警告には一定の妥当性があると指摘している。

FRBは、預金保険の対象外である預金取扱機関による申請をより厳格に審査しているが、こうした機関は、預金保険の対象となる銀行に比べ、継続的な監督の水準が低い。FRBのマイケル・バー(Michael Barr)理事は、この提案について、当該口座が不正金融に使われないようにするための十分な安全措置が欠けているとして反対票を投じた。

ただし、前年(2025年)には状況が変わり始めていた。12月、FRBはフィンテック企業や暗号資産企業を対象とする、新たな限定的決済口座の可能性を初めて示した。その後2026年3月には、暗号資産取引所クラーケン(Kraken)が、初回申請から5年を経て、制限付きながら暗号資産企業として初めてFedのマスター口座を取得した。

公開情報によると、暗号資産プラットフォームのリップル(Ripple)、アンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)、フィンテック送金企業ワイズ(Wise)も、マスター口座の取得を目指している。

FRBの新提案は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が、FRBに対し決済口座に関する方針を見直し、アクセス拡大の方法を検討するよう求める大統領令に署名した翌日に示された。

クラロス・グループ(Klaros Group)のシニアディレクターであるロマン・ゴールドスタイン(Roman Goldstein)氏は、この大統領令について「ホワイトハウスがFedの決済システムへのアクセス拡大を望んでいることを示す明確なシグナルだ」と述べた。

Fedの規則では、マスター口座を保有できるのは預金取扱機関に限られている。ゴールドスタイン氏は、複数の暗号資産企業やフィンテック企業が預金信託会社の認可取得を進めており、それによってFedの口座を申請する資格を得ることになるため、今回の大統領令の恩恵を受ける可能性が高いと指摘した。

FRBは、今回の提案について、口座や決済サービスへのアクセスを認められる主体に関する法的要件を拡大するものではなく、最終的な裁量は引き続き全米各地の地区連邦準備銀行にあると説明した。ただしFRBは、この提案が審議中である間、非伝統的企業からすでに提出されている口座申請について、「一貫した実施」を確保するため、地区連邦準備銀行に判断を一時停止するよう求めたという。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Fed proposes limited payment accounts for fintechs, others
(Reporting by Pete Schroeder and Hannah Lang; Editing by Michelle Price, Franklin Paul, Daniel Wallis and Stephen Coates)
参考:FRB
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。