TORICOのトレジャリー戦略、イーサリアムを選んだ理由や運用方法、今後の展開は?
全巻セット専門ネット書店の「漫画全巻ドットコム」などを展開する東証グロース上場企業TORICO(トリコ)。昨年、同社は暗号資産トレジャリー(DAT:Digital Asset Treasury)事業参入を発表し、現在Mint Townと資本業務提携を行い、現在イーサリアムの購入を進めている。そんなTORICOの代表取締役である安藤拓郎氏と、Mint Town代表取締役 CEOであり、TORICOのトレジャリー(DAT)事業アドバイザーとして活動する國光宏尚氏を取材。二人にトレジャリー戦略をはじめた理由や提携の経緯、今後の展開などについて語っていただいた。
インタビュー:安藤拓郎氏・國光宏尚氏
── TORICOがトレジャリー戦略に参入することになったきっかけを教えてください。
安藤:もともと私たちは、NFTブームの数年前からブロックチェーン・クリプト領域には興味を持っていました。漫画などのエンタメコンテンツを扱う会社として、何かこの領域で事業ができないか検討もしていました。残念ながらNFTブームが去ってしまい、準備していた事業はペンディングになったのですが、その後もこの領域をウォッチしていました。
そんな中、米国でストラテジー社のトレジャリー戦略が話題になり、その後国内でもそれを追随する企業も増えてきました。トレジャリー戦略をいろいろ調べていくうちに、とても面白い取り組みだと思ったんですよ。そこから私たちもできないか検討をはじめました。
TORICOはオリジナルスニーカーの製造販売からはじまった会社です。その後に漫画全巻のセット販売や、マンガアプリのリリース、漫画・アニメをモチーフとしたイベントスペースの運営など多角的に事業を展開してきました。最初から「これをやりたい」という領域を特定していたわけでなく、面白いことを事業として成り立たせたい、面白いことを世界に広げたい、という想いで起業して事業を拡大してきた会社です。
だからトレジャリー戦略についても躊躇なく進めていこうと考え、新事業として暗号資産投資事業を開始することを昨年7月に発表しました。その後トレジャリー戦略を進めるにあたって色々なパートナーを探しました。そして昨年12月にMint Townさんと資本業務提携を行い、本日ご一緒している同社代表取締役の國光さんにDAT事業アドバイザーになっていただき(今年6月にTORICO取締役に就任予定)、現在事業を一緒に進めています。そして現在は複数回イーサリアムの購入を実施している状況です。
Mint Townと組んだ理由は?
── Mint Townと資本業務提携することになった決め手は何ですか?
安藤:実は7月に新事業の発表をしてから、ありがたいことに多くの会社さんからお話をいただいたんです。本当にたくさんの会社から魅力的なご提案をいただいたんですが、その中でも、Mint Townは暗号資産事業に関する知見と実務経験のバランスが極めて良く、戦略立案からマーケティング、運用までを一気通貫で担える点が、最終的な決め手となりました。
Mint Townは、國光さんが得点屋・フォワードとしての強さが表に出ていると思いますが、実は中盤やバックスがすごくしっかりしている会社なんです。私たちは上場企業がトレジャリー戦略を進めるにあたって、税務や会計管理、監査法人への対応はどうするか、など不安な部分も多かった。暗号資産の運用ノウハウだけではなく、そういった部分もしっかりカバーいただける体制をお持ちだったところも決め手でした
國光:僕は以前にgumiで、そして取締役COOの守安功はDeNAで約10年社長を務めてきた経験があります。またトレジャリー戦略推進のため今月に設立したTORICO Ethereumの尾下順治さんもアクセルマークで10年ほど社長をしていたキャリアがあります。
なのでTORICOとMint Townは、安藤さんも含め、上場企業の社長経験者4人もいるチームなんですよ。これは結構私たちの強みだと思っています。
さらにMint TownのCFOの稲川とは、gumi時代からずっとクリプトを一緒にやってきました。gumiは新日本監査法人だったんですが、クリプトと監査法人の向き合い方について、延々と喧々諤々やってきた経験があるんです。
結局、上場会社という立場では、監査法人や東証、関東財務局といったレギュレーターの方々ときちんと向き合わないと、どれだけ良いアイデアでも通らないものは通らない。この領域は新しい分、何が良くて何がダメか決まっていない部分も多い。だからこそ、「これはどうですか」「ここはどうですか」と一つひとつディスカッションしながら調整していくことが重要なんです。
そういう点で、僕や稲川がgumi時代に新日本監査法人さんとがっつり向き合ってきた経験は、大きな強みだと自負しています。
トレジャリー資産にイーサリアムを選んだ理由は?
── トレジャリー戦略としてイーサリアムを選んだ理由は何でしょうか?
國光:まずビットコインのトレジャリー戦略は、競争が激しい。国内でもメタプラネットさんのように圧倒的なナンバーワンがすでに存在しています。トレジャリー戦略にとって特定の暗号資産で圧倒的なナンバーワンになるというのは、まず一つ重要なポイントです。
ビットコインを購入して株価を上げていくという考え方はすごくメイクセンスだと思っています。ただ一方で、その分トレジャリー企業としてビットコイン保有量以外の差別化が難しい。
その点、イーサリアムの大きな特徴は、利回りが付くところです。たとえば国内暗号資産取引所のステーキングでも、現在は年間で3%弱の利回りが見込めます。仮にイーサリアムを100億円分保有していれば、年間で約3億円分の収益が発生する。
この「利回りが付く」という点は、ビットコインにはない大きな魅力です。さらに、これまでのトレジャリー企業は「買って貯めておく」というフェーズでしたが、今後は「いかに運用して稼ぐか」というフェーズに大きく移っていくと思っています。そういった意味でも、イーサリアムが一番適していると考え、イーサリアムを選びました。
── ステーキングで利回りを出せる暗号資産は他にもありますが、それらは検討しなかったのでしょうか?
國光:それらの中での規模や知名度を考えると、やはりイーサリアムが圧倒的にナンバーワンだと思っています。またETFへの資金流入でも、米国では複数の暗号資産が上場していますが、ビットコインに次いでイーサリアムが圧倒的に多い。
さらに世界中のステーブルコインの約7割が、イーサリアム上で発行されています。また伝統的な金融機関のこの業界への本格的な参入が進み出していますが、そこでもやはり選ばれていくのもイーサリアムだと思っています。
それらを総合的に考えて、日本の上場企業としてこのタイミングでトレジャリー戦略をとるのが最適だと考えました。
イーサリアムをどう運用していく?
── 具体的にイーサリアムをどのように運用をしていく予定なのでしょうか?
國光:まずはベーシックなものとして前述の国内暗号資産取引所でのシンプルなステーキングがあります。年利3%弱ぐらいですが、リスク度合いもかなり低く、監査法人としても問題ないであろう方法です。また税金面でも、暗号資産の法人期末課税の対象外にもできます。
一方、グローバルなDeFiでの運用という手段もあります。アグレッシブなものだと、15%以上の利回りを出しているケースもある。ただし基本的にリスクとリターンは正比例しますので、高利回りのものにフルベットするのもリスクが高い。
だから低リスクのものをベースにしながら、「どこまでリスクとリターンのバランスを取っていくか」というのが重要になってきます。その運用ノウハウがあるかが、トレジャリー企業の大きな差になってくると思います。
私たちはMint Townやgumiで、こうした取り組みを散々やってきました。そういう意味では、このあたりのノウハウは他の会社よりも持っていると考えています。現時点で具体的な運用方法はまだ公開できませんが、リスクとリターンのバランス、あと規制面も十分考慮し、戦略を練っています。
イーサリアムの経済圏での取り組みは?
── 買う・持つ・運用する以外に、イーサリアムという経済圏の中で何か取り組んでいく考えはあるのでしょうか?
安藤:イーサリアムが盛り上がれば、間接的に私たちの企業価値にも恩恵があると考えています。「イーサリアムといえば、TORICO」といっている以上、それが目に見えて分かるような取り組みをやっていきたいです。日本において、イーサリアムへのマス向けの窓口のような存在になりたいと考えています。
國光:ちょうど2月12日に「Ethereum Shift 2026」というオンラインイベントを開催するのですが、今後もこのようにイーサリアムへの認知と理解を広げるイベントを実施していきたいです。さらにイーサリアム系のプロジェクトの出資など含め、エコシステム全体を盛り上げていけるような施策を検討していきたいですね。
TORICOのトレジャリー事業と既存事業
── TORICOの株価には、トレジャリー以外の既存事業の業績も加味されると思います。今後既存事業の連携は考えていますか?
安藤:現時点ではエンタメ領域の既存事業と、トレジャリー事業はエリアを分けて考えていて、それぞれをきっちり利益が出る形で伸ばしていく、というスタンスです。その上で将来的には事業同士をマージできるような未来があればいいなと思っています。
國光:私は「マスアダプションにおいてマーケット参入のタイミングはすごく重要」ということをこれまでの経験で学んできました。今の足元の状況を見ると、暗号資産・ブロックチェーン領域はユーザー数がまだ少なすぎて、いきなりC向けのサービスを出しても、ビジネスとして成立する規模にはなかなかなりません。
だからこの業界はまず暗号資産トレジャリーやETF、ステーブルコインなど通じて、ユーザーの裾野を広げていくことが重要だと思っています。
国内でもこれまでビットコインやイーサリアムの現物を持っていなかった人たちが、トレジャリーを通じてこの業界に入ってきている、という構造変化が起きている。まずはこの部分を徹底的に広げていって、ユーザーを増やしていく。その先に、ユーザー数が十分に増えてきた段階で、エンタメ事業との連携なども考えていきたいですね。
今は一般の方々にイーサリアム自体の知名度を上げること、TORICOの知名度を上げること。その結果として、イーサリアムに貢献し、日本の中でイーサリアムをより広げていく。そこにフォーカスしていきます。
トレジャリー企業としての情報発信について
── 現在國光さんは、メディア出演などでインフルエンサーの方々と一緒に「イーサリアムといえば、TORICO」というメッセージを発信されています。情報発信についてどのような戦略をお考えですか?
國光:まずは上場企業として、投資家の方々に対してしっかりIRをやっていくことが大切です。前述の通り、私たちは上場企業の社長経験者が複数いるチームですので、ネットワークやノウハウも含め、この部分の経験値はかなりあると思っています。
それに加えて一般の方々へのPRも重要です。TORICOに出資しているミントタウンが管理・運営を行うファンド「Shooting Star1号投資事業有限責任組合」には、堀江貴文氏や溝口勇児氏をはじめとした起業家堀江貴文氏や溝口勇児氏、そして本田圭佑氏をはじめとした起業家に加え、イケダハヤトさんのようなインフルエンサーの方にも出資いただいています。暗号資産に興味のない方々にも影響力のある彼らにも仲間になって応援いただいて、一般向けPRもしっかり行なっていきます。
さらに、イーサリアムのコミュニティやテックコミュニティとも連携しながら、技術的な部分にも貢献していきたいと思っています。
株式投資家に向けたIR、より多くのユーザーに向けた一般向けPR、そしてコミュニティと向き合いながらの情報発信。この3つを同時にしっかりやれる点は、他の会社にはなかなかない、僕らの強みです。
トレジャリー企業、暗号資産業界の未来は?
── 最後にトレジャリー企業の未来や、暗号資産業界全体の未来をどのように考えていますか?
國光:トレジャリー企業のフェーズとして、トレジャリー1.0は基本的に「購入して貯めておく」という段階でしたが、トレジャリー2.0は「それを運用して稼ぐ」というフェーズです。私たちも実施しているこのトレジャリー2.0をしっかりやり切れるかどうかが、次の勝ち残りを分けるポイントになると思っています。
安藤:1.0は買って持っておく、2.0は運用、そして3.0は自分たちの運用ノウハウを活用して、一般の方々から資産をお預かりして運用するサービスを展開するといわれていると思います。ただこの3.0は国内では規制面でクリアしなければいけない課題は多い。正直なかなかスタートアップ企業が切り開いていける領域ではないですよね。そういう意味では上場企業としてアドバンテージはあると思っていますので、まずは2.0をしっかり進めて、その次のステージも目指していけるといいなと考えています。
國光:昨年からETF、ステーブルコイン、そして私たちも行うトレジャリーが、暗号資産のマスアダプションを牽引していく流れになってきています。結果としてマスアダプションを進めるのが、この業界がこれまで掲げてきた分散型、非中央集権型というものではないというのは皮肉ではある。しかしそれでも参加者が一気に増えるという点では、すごくポジティブなことだとも感じています。これまで怪しいと言われていた暗号資産が、安心できるものとして受け入れられはじめている。この変化は大きいです、
現在、暗号資産市場は価格的に厳しい状況です。しかし明らかに前述のような、暗号資産のマスアダプションに向けた役者は揃ってきているわけです。現在のボラティリティは想定内。長期でみれば、これまで市場規模はずっと拡大をし続けてきています。
だから私たちはトレジャリー戦略を進めていきます。まずは「イーサリアムといえば、TORICO」と多くの人に言ってもらえるような存在になり、この業界を元気にしていきたいと思っています。
関連リンク/イベント情報
■「Ethereum Shift 2026~イーサリアムが変革する、企業・金融・社会の未来~」
→イベント情報・視聴はこちらから [ 2月12日(木)12:00 配信開始 ]
■ユーザー参加型企画「#AI魔法コンテスト」
株式会社TORICOの公式キャラクター「TORICOちゃん」を起用し、
AI技術を用いて“最強の魔法『イーサリアム!』”を表現する動画作品を募集する参加型コンテストです。Mint Townが組成・運営するShooting Starファンド参画者であるイケダハヤト氏のプロデュースにより実施され、イーサリアムを一般層にも親しみやすく届けることを目的としています。
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編集:あたらしい経済編集部
写真:堅田ひとみ