見えてきたブロックチェーンのサプライチェーン適用性〜トヨタG向け商取引DX基盤構築を通じて〜纐纈晃稔(豊田通商システムズ)

特集 企業のDXとブロックチェーンの実用化

あたらしい経済とSBI R3 Japan 株式会社の共催オンラインイベント「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とブロックチェーンの実用化」の第6セッション「見えてきたブロックチェーンのサプライチェーン適用性〜トヨタG向け商取引DX基盤構築を通じて」のイベントレポートです。

見えてきたブロックチェーンのサプライチェーン適用性〜トヨタG向け商取引DX基盤構築を通じて

登壇者
纐纈晃稔(豊田通商システムズ)

商取引DX基板としてのブロックチェーンのメリットと課題

今日のお話ですが、今後花開くと見ているブロックチェーンをつぼみ段階で手の内化したいという当社の思いがありまして、検討していた商取引DX推進にブロックチェーンを調査し、使ってみようという試みをしております。

調査の結果ですが、ブロックチェーンはメリットもあるけど、課題も存在していると思っております。しかし課題の大部分は「Corda」を使うことで、ある程度解決できることもわかってきました。

ブロックチェーン(Corda)をサプライチェーンへの適用や電子契約サービスを構築している経験から、今回は開発時やビジネスプランニング時の留意点をシェアさせていただこうと思っております。

ブロックチェーンを活用した商取引基盤構築までの経緯と悩み

ブロックチェーンを活用した商取引基盤構築までの経緯と悩みに関してですが、まず「ブロックチェーンって何?」というところから考えていきたいと思います。

ブロックチェーン・メリットと商取引DXということで、一般的に言われているブロックチェーンのメリットを挙げていくと、高セキュリティ、高可用性(システムが止まりにくいこと)、運用コストが低いこと、簡易に自動化可能である(スマートコントラクトすればいろんなことが自動化できる)ことなどが挙げられるかと思います。

そういう意味では商取引のDX、電子契約、電子見積り、電子受発注、電子請求、電子精算など、他にもいろいろありますがそういったものを実装するのにブロックチェーンは向いているのではないかと考えました。

商取引DX基盤を構築する基盤技術としてブロックチェーンは向いていると思ったのですが、いろいろ調べていくと、なかなか使えない部分も見つかってきました。そこをみていきたいと思います。

一般的なブロックチェーンメリットや課題に対する開発者による実質的差異分析

まず一般的に言われているブロックチェーン・メリットのなかの高セキュリティに関しては、データブロックのハッシュ連結により改ざん不可能、エンタープライズ分野(コンソーシアム型)でいうと「対改ざん性は高いが、ブロック共有による秘匿性が…」とありますが、ブロックを皆で共有してしまうとブロック自体を暗号化していても、どうしてもブロックヘッダーを見ていると、誰と誰がなにかしてそうなどがわかったりですね、なかなか秘匿性という部分のセキュリティ、対改ざん性は高いけど、秘匿性に問題があると考えました。

次のブロックチェーン・メリット「高可用性」です。「同作業する複数ノードにより高可用性を実現」とありますが、実際は管理サーバーへの高負荷やノード数により可用性はなかなか確保できない部分もあると思いました。中央管理に比べればいい気がするのですが、それでも問題はあるなという風に考えております。

続いて「低運用コスト」という部分です。こちらは一般的なパブリックブロックチェーンでは運用者別収入により、利用ユーザーコストを低減できますが、エンタープライズ分野での仮想通貨利用時以外は技術者確保やITインフラコストがなかなかかかってくると考えています。

そして「簡易に自動化可能」というところで「スマートコントラクトにより簡易に処理を自動化」というところですが、こちらに関しては実際に実現できるかと思っています。

結論として一般的に言われているブロックチェーンメリット「高セキュリティ、高可用性、低運用コスト」をしっかり検討しないとまずいなということで、少し細かく見ていきたいと思います。

一般的なブロックチェーンであるHyperledger FabricやQuorumなどを使うとこういう形(上記の図)になるかと思います。

各社1ノードを持つと、A社、B社、C社、1ノードずつでA社とB社が取引をしますとここで出来た処理ブロックは全く関係ないC社にも共有されます。セキュリティ関連でいうと、先ほど言いましたデータの秘匿性が低い部分が出てきます。

可用性関連に関しては管理サーバーが高負荷になってきたり、ノード多数化により停止可能性が出てきます。

運用コストに関してはITインフラコストが高いということと技術者確保コストが高いということで、ブロックチェーンや分散システムのことをわかっている技術者はあまりいませんので、なかなかコストがかかるなと言う風に考えています。

さらに少し細かくみたいのがITインフラコストが高いというところです。バラバラで1ノードずつ見ればそんな大したことないかもしれませんが、まとめて考えてみるとトータルコストはなかなかいくなという風に考えています。

こちらクラウドにAWSやAzureにディスク、ブロックチェーンを置いてディスクの費用いくらになるかという試算をしました。

例えば電子契約のようなシステムですと、A社、B社があって電子契約を結べるものに、加入者数が500社、1企業あたり2.5Gb、データ保持、ディスク費用1Gb、年間600円として想定した場合、一般的な管理システムであれば1Tbくらいですので、年75万円くらいになります。

一方ブロックチェーンの場合、中央管理者が持つデータを500社全部を各ノードが持つという形になりますので、年3億7,500万円かかってしまいます。これは負担できないなと考えました。

エンタープライズ領域ブロックチェーン課題解決のためのCorda

そういったなかコストの問題などいろいろと課題を解決するために調べている最中に出会ったのが、Cordaになります。ITインフラコストはCordaですと、同じ様にA社、B社、C社でそれぞれノードがあったとして、A社とB社が取引した場合、取引ブロックはA社とB社だけで共有されます。そしてC社にはコピーされません。

データの秘匿性が低いということに関しては、自ノード関連データのみ保持のため高秘匿性が高くなるということになります。また管理サーバー高負荷・ノード多数により停止可能性有りというところですが、一般的なブロックチェーンに比べれば、管理サーバーの負荷は低いんですが、ブロードキャストなども非常に少ないので良いのですが、ただこの解決はなかなか難しいのではないかと思っています。

次にITインフラコストが高いという部分です。ディスク容量に関しては、原則的には中央管理システムと同じ容量になるはずだという風に考えています。

あと技術者確保コストが高いという問題に関しては、他のブロックチェーンの技術ですとなかなかマニアックな開発言語とかいろいろ確保しないといけないのですが、Cordaは標準開発言語がkotolinですので比較的に確保が容易です。JAVAが使えて分散システムのノウハウさえある方であれば開発できると思います。

そういう意味では他のブロックチェーンに比べれば、開発者の確保は簡単かなと思います。ただ一般的な技術者よりはかなりハイレベルな人を用意しないとなかなかうまくいかないと思います。中央システムよりは開発者確保コストというのは高くなりますが、他のブロックチェーンに比べれば、かなり安く効率的に技術者を確保できるのかなという風に考えています。

2021年1月開始予定のCordaによる電子商取引基盤の構築状況

Cordaを見つけましたので我々の構想としてはCordaの上に電子商取引基盤を構築しようと考えております。まずAzureの上にCordaを構築しまして、各社1社に1ノード、1組織の場合もあるのですが、基本的には1ノード1社で、ノードを組んでいきます。最初に使うスマートコントラクトというかアプリケーションとしては、電子契約サービスを2021年1月から開始しようという風に考えております。そのあと、どんどんスマートコントラクト機能を使って商取引機能の範囲を広げていこうと思っております。

Step2としては見積・請求書発行、受発注サービス、精算サービスをどんどんどんどん追加して、商取引に関わるもの企業間取引に関わるものは、この基盤の上で処理ができるという風にしていきたいと考えております。

どんどんこういう商取引をすべてこの基盤上でやるとサプライチェーンのトレーサビリティーシステムが構築できますので、そういった形でも利用していきたいという風に考えております。

また基本的にはこの電子商取引基盤は、我々がクラウドでサービスとして、全ノードを我々の方では預かるという前提でまずは動きますが、自社でノードを保有したいという場合は、ファイヤーウォールの中で、サーバーを立てていただいたりしてCordaを構築していただければ、ノードのDockerさえ持っていけばそのまま稼働できます。

ネットワークの設定とDockerさえ持っていってしまえば、そのまま我々が持っているクラウドの商取引基盤と取引ができますので、自社で持ちたいという様な企業様にも対応することができます。

また当社の方で預かっても問題ないのですが、海外にノードを置いた方が良いという場合にも、海外の方のクラウド上にCordaを構築して、そこでノードをDockerで持っていけば、またこれも問題なく、その取引ができるという様な構想をしております。

電子契約サービスから提供開始を行う理由

ちょっと細かく1つずつ見ていきたいと思います。電子契約から始める理由としてですが、非常にメリットがわかりやすいからということで電子契約サービスから始めたいと考えています。

まず電子契約のメリットとしてはみなさん使われている企業様が多いと思いますが、印紙であったり契約書の作成はファイルだけですみますし、郵送費用が要りませんので、基本的に非常にコスト削減効果がみえやすいです。

トータルで言うと赤字で書いてありますが、300人、400人くらいの会社ですと、年間サービス費用で考えた場合は140万円削減できます。

ではこれがグループ会社500社同じ様に削減できたら年間、7億円削減できると言うことで、なかなか大きなコスト削減効果が見込めるなと考えております。

続いて契約締結の高速化についてです。これは言うまでもないですが、郵送で送っていたら郵送だけで2日、レターパックだけで2日かかりますが、それが10分くらいで済みますので非常に高速化されます。

あともう1つ。昨今、新型コロナの影響でリモートワーク推奨されておりますので、そういう意味ではリモートワーク推進にもつながるということで、効果が分かりやすいということから、電子契約から入ろうと思っています。

政府による2023年から開始予定のインボイス制度の影響

続きましてStep2の見積・請求書発行、受発注サービスというところに構想を広げたいと思っている理由が2023年くらいになるのですが上記の日本経済新聞の記事をみていただきたいと思います。

こちら「請求書 完全電子化へ仕様統一で政府・50社協議」とありますが、2023年くらいインボイス制度が始まるのが目処に請求書のデータフォーマットを国としてある程度決めてしまおうという動きが出ております。

であれば先ほどのブロックチェーン基盤の方に指定されたフォーマットで、データをやり取りするものを作れば、当然請求書のDXにつながりますし、請求書のフォーマットが決まってくれば見積書もデータでやりとりができたり受発注に関しても請求書データをベースに電子化することが可能かと思います。

そういった意味でこれらのDXを進めることができると、国の制度もどんどんDX進めておりますので、そういったものに乗っていけば、新たなブロックチェーンサービスになるだろうと考えています。

(↓次ページに続く)

構想段階中の暗合資産を利用した精算サービス

続きまして精算サービスでありますが、こちらに関しては暗号資産を活用してCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)を短期化し、中小の資金流動性を向上させるとありますが、仮想通貨を使うことによって、あまり大きな声では言えませんが、なかなかかかっている海外送金での為替手数料とかを減らしたり、あとある程度キャッシュのあるところがプールすることによって、そちらをバスケット制みたいな形で、暗号資産を擬似的に扱うことによって、中小企業の資金融資を楽にしたりとそういった形で使えます。これはどうしても法制度に依存してしまいますが、いろんな使い方ができるんじゃないかなと思います。

せっかくブロックチェーンを使うなら、暗号資産のメリットもどんどん使えるんじゃないかなということを想定しています。ただまだ法制度が追いついていないので、構想段階です。

サプライチェーン・トレーサビリティシステムについて

あと先ほど話したサプライチェーン・トレーサビリティシステムとして使えるという部分があります。サプライチェーン・トレーサビリティシステムのメリットとしては、まず効率化です。生産計画時に使えたり、取引証明の効率化などに使えてきます。あと品質向上です。問題発生時に原因追跡スピードが向上したり、問題発生原因の正確な記録、安全性の証明活用にも使えるというところで期待できるかなと思っています。

あと3番目に新たな金融手法の確立というものがありますが、トランザクションレンディングの実現です。トランザクションを担保にして「大企業と取引していますよ」とかそういった証明をもとに金融機関から融資を取りやすくするというトランザクションレンディングといったものを実現できたりします。こういった使い方も非常に期待しています。

サプライチェーントレーサビリティシステムは、前からメリットがあるのはわかっているのですが「誰がお金出すの?」という問題がありました。

みんなでちょっとずつお金を出しあっても、このサプライチェーントレーサビリティシステムを作るのになかなか効率的なお金の出し方、お金を出す人って決めるのが難しかったんですが、ブロックチェーンメリットを活用して、契約・見積・請求・受発注のDX化により実現していけば、自然にサプライチェーントレーサビリティーシステムができますので、この使い方をすれば誰がお金出すの問題というのは解決できるんじゃないかという風に考えています。

続きまして5番の自社保有というところですが、こちらはもう先ほどお話した通りです。自社でファイヤーウォール内でしかデータを持ちたくないよということであれば、それも可能ですよという話になります。

あと6番の海外クラウドの使い方なのですが、これは我々としても非常に期待している分野です。最近、各国でデータ規制が出てきています。

例えば国名をあげていますが、中国・ベトナム・ロシアなどでは、個人情報及び国家が重要とするデータは自国にデータを保持したり、データを他国に持ち出さないという規制がございます。そうなってくると我々の方でですねサプライチェーン取引、商取引基盤を作ったから我々の方にデータを預けるということがなかなかできません。

日本で我々が日本の会社、アメリカの会社、タイの会社のデータを預かることはできるのですが、中国やベトナムの会社を日本リージョンの中に持ってこようとすると、これはできません。

ですので日本及び非規制国は日本でクラウド化して、規制国の中国では中国でCordaを立ち上げて、ノードをDockerでノードだけ持っていけば、そのままネットワークの設定をすれば取引として使えます。

基本的に広く同じ様にベトナムでもできますし、データ規制国の間、データ規制国ではその国でCordaを立ち上げることによってデータ規制に対応することができて中国やベトナム、ロシアとも商取引DX基盤、サプライチェーン管理というのができてくるのではないかという風に考えています。

ブロックチェーン(Corda)・ビジネスを企画する上での注意点

今までは我々が今構想していることをお話ししたのですが、そういう意味では我々が今構築していまして、ほぼできておりまして、テスト段階に入っているのですが、ここからはそういったものを作る中でいろいろ得たノウハウをシェアさせていただきたいと思います。

まず最近頻繁に「経営層からブロックチェーンをベースにビジネス企画を出すよう指示を出された」というご相談を受けることがあります。

ただ「明確にブロックチェーンのメリットを活かすユースケースがないしコストも合わない、どうしようという」と相談を受けますが、こちら今日お話しした内容をまとめた感じになります。

基本的にブロックチェーンを使うときのメリットとしてあげられるのは、やっぱりデータセキュリティです。なかなか踏み込んで話せなかったところですが、サービス事業者がデータを閲覧できない運用が可能です。

昨今、就職斡旋企業がデータを別の分析に使っていたことやビデオ会議システムのサービス企業がで勝手にユーザーの権限を変えていたこととかですね、サービス事業者がデータを見れたり、扱えることに対する問題が発生しております。

こういった問題もブロックチェーンを使えば、サービス事業者がデータを閲覧できない運用も可能ということがメリットになるかと思います。

これは結構大きくてサプライチェーンやってくる場合、取引データって下請けさんへ「何か発注しました、さらにその下請けさんへ何かを発注します」という場合に、下請けさんへさらに発注する部分は、原価データになってきますのでサプライチェーンの上流に知られたくないというものなのです。

なのでサプライチェーンの上流の企業はもちろんのこと、サービス運用社もデータの中身を見れないというのは、非常にサプライチェーンシステムを作る上や他のサービスを作る上でもメリットになるんじゃないかなと考えています。

あと先ほどお話しさせていただいたグローバル対応、データ自国保有規制国でも対応できます、グローバルに展開できますというのがメリットになるかと思います。あと機能拡張性です。スマートコントラクトは意外とですね、簡単にいろいろできますので。一度、取引基盤を構築するとですね、適用範囲拡大が容易にできると考えております。

あとそれに加えて暗号資産を活用できるということです。

まだ規制が多いので我々も勝手なことはなかなか言えないのですが、ファイナンス・アカウンティング分野では革命的な機軸を打ち出せる可能性を考えています。我々もいろいろな案を出していますが、まだ法令に引っかかってしまうのでなかなかオープンには話せません。

しかし金融、ファイナンス・アカウンティング分野で活用すれば、今の困っている部分に対してかなり革命的な改善ができるのはないかと考えています。

あとフェールセーフでもなく、フェイルソフトでもなく、止まらないフォールトトレランスという形で可用性は中央管理システムに比べるとかなり高いこともメリットになるのかなと思います。

そしてスケーラビリティです。我々のように完全な分散システムというよりは、分散システムをクラウドで扱っているものに関しては、スケーラビリティは大きな課題になってきますが、非常に簡単に大きくすることができます。

特にオーケストレーションツールであるKubernetesなどそういったものを使っていくと、かなり柔軟なスケーラビリティを確保することができるのではないかという風に考えております。

サービス開発時に技術関連で気をつけるべきポイント

あと技術関連でお気をつけいただきたいことがいくつかありますので、情報をシェアさせていただきたいと思います。

まずITインフラ構築に関してです。ITインフラってサーバー、OS、ミドルウェアといったものだけじゃなくて、ブロックチェーン基盤構築まで入れておりますが、この工数が想定以上に必要になります。

一般的な中央管理システムですとアプリ開発が7,8割、ITインフラ開発が2割,3割という風なイメージがあるかと思いますが、ブロックチェーンの場合、ITインフラ構築:アプリ開発の工数、コストのかかり方がITインフラが7、アプリ開発が3、もしくは8:2とかそのような感じでITインフラ構築が思ったより大変になります。

なのでそのあたりの専門家の確保や予算計画もしっかりと見据えた方がいいかなと考えています。やはりマイクロサービスアーキテクチャなどいろんなツール類を使わないとなかなかうまく運用できないかなと思っていますので、Asure、AWS、コンテナ・オーケストレーションツール、CI/CDツール、インフラ定義ツールの高レベル要員の確保は必須ではないかなと考えています。

特にKubernetes・Terraformはインフラ定義ツールですけど、インフラをテキストで作れるようにしておかないとノード1つ追加するのもいちいち手作業でやっていると、ミスの温床になりそうな気がします。我々はこの辺はTerraformでですね、インフラは全てテキストで動かすという方針のもと開発を進めています。またぜひそうした方がいいという風に考えております。

あとアプリケーション開発ですがピュア分散システムですので、例外処理が複雑かつ多量となります。ですので分散システムの知見がある技術者の確保をおすすめしたいなと考えています。あと開発手法が確立されていないため、コンピュータサイエンス・ソフトウェア工学に精通した技術者の確保もおすすめしています。

最後に、分散システムの例外処理の面倒さについて、なかなか説明するのは難しいんですけど、Amazonの技術者がペーパを出しています。

Amazon Builderr’s Libraryっていうのがあるんですが、そこでJacob Gabrieisonさんがですね、分散処理の面倒くささ、特に例外処理の面倒くささに関するペーパーを出されています。ブロックチェーンのために書かれていたものではないので、一致しないものもあるんですけど、分散処理でどういったところが面倒臭いのという時にはそういったものが1つ事前に参考になるんじゃないかなと思います。

機能支援システムについても留意とありますが、普通のデータベースシステムRDBMSとはかなり違いますので、RDBMSで簡単にできることが、なかなか難しいよというところもお気をつけになられた方がいいと思います。

あとあえて今ブロックチェーンを利用したビジネスに今取り組むということに関してですが、基本的には可能性のある基盤システムブロックチェーンにしろ、Cordaにしろ、非常に可能性のあるものだと我々考えています。

ただビジネスプランニングにもシステム構築にもノウハウが非常に必要になりますので、実ノウハウ蓄積と人材育成が重要になるのかなと考えています。そういう意味ではブロックチェーンの将来性を信じられるのであれば、他社に差をつけられる今、取り組むべきじゃないかなということで、今取り組むと非常に大変です。我々もやはり辛い思いをしながら、今構築しておりますが、ぜひ皆様も興味おありになるのであったり、ブロックチェーンにかけたいという部分があるのであれば、ぜひ今取り組まれることをおすすめしたいと思います。

3番目が経営層の理解についてなのですが、これについて私は必ず話しています。ブロックチェーンの将来性についてですね、経営層の理解がないとなかなか難しいかなと思います。なぜならコストのかかり方とか、運用の仕方とかもですね、今までの中央管理システムとかなり違いますので、なんでこんな所にこんなお金がかかるのとかですね、なんでこんな所にこんな時間かかるのとかですね、経営層の理解がないとなかなかプロジェクトが進まないかと思うからです。

なのでしっかりとですねブロックチェーンの将来性、こういうメリットがあります、ただここは技術的に確立されていないので、この部分は余分にかかってしまいますということをですね、経営層に理解していただいた上で、進めないとなかなか大変なのかなという風に考えております。

ブロックチェーンビジネスを進める上でポイントとなる考え方と人材

纐纈氏のプレゼンテーションが終わり、あたらしい経済編集長の設楽とウェビナー参加者からの質疑応答が始まった。

「DX取引基盤は契約書の管理から始まり、具体的にどのように展開してくのでしょうか」とあたらしい経済設楽は質問した。それに対して纐纈氏は「どんどん広げていかないとブロックチェーンのメリットは出てこないんじゃないかなと考えていますんで、どんどんアイデア出して広げていきたいという風に考えております」と答えた。

続いてウェビナー参加者から「BigQueryなどブロックチェーン・DLT以外の基盤との比較はいかがでしょうか」と質問が出た。

纐纈氏は痛いところを突かれたと言いながら「やはりですね、現時点ではブロックチェーンの方が劣っている部分というか、まだ追いついていない部分が多分にあります。最初に話したようにブロックチェーンの将来的なメリットにかけてですね、取り組んでいるという部分が多いですので、現時点ではBigQueryであったりいろんなNo SQLで分散システムを作られた方が楽は楽です。ただ将来はブロックチェーンの方が花を開くという風に信じて我々は進めております」と答えた。

纐纈氏の答えに対して、設楽は「ブロックチェーンは暗合資産を活用できることが大きな特徴である」言及した。それに対して纐纈氏は「おっしゃる通りだと思います。そういう意味では暗号資産の活用、有効活用を見据えないとブロックチェーンのメリットって出ない可能性もあるので、そこは非常に重要になるかと思います」と答えた。

そしてウェビナー参加者から「ブロックチェーンの構築に必要な育てるべく必須となる人材の専門分野はなんでしょうか」と質問が。

纐纈氏は「そういう意味では、点の話で分散システムの専門家とか、Kubernetiesとかの話をしたんですけど、本当のことを言うと、そこのシステムもわかっている、ビジネスもわかっている、ブロックチェーンをわかっているというのを網羅的に見える、やや専門的なジェネラリストが1人いないとですね、これはブロックチェーン技術の適用ってかなり難しいなと言う風に考えています。だからまず一番最初に育てるべきと言うか必要になってくるのが、ブロックチェーン、ビジネス、技術を前半見えるジェネラリストだと思います」とコメントした。

纐纈氏の意見に対して、設楽は「エンジニアとかと言われがちですけど、実はそこ横断できる人が大事になってくるっていうのは、ちょっと難しそうだなと思う方にも、チャンスはあるかもしれないですね」とコメント

そして纐纈氏は「その通りだとも思います。今私エラそうにはなさせていただいておりますが、ブロックチェーンを組めと言われたら、なかなか難しいんですけど、ビジネスとかなんとか全般を見れていますし、構造自体わかるので、ブロックチェーンに完全に特化というよりは、ブロックチェーンの概要は理解した上で、全部みれるっていう方がいて、初めてビジネスにできると思います」と答えて、セッションは幕を閉じた。

(この記事はイベント内容を編集したレポートです)

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プロフィール

纐纈晃稔
豊田通商システムズ株式会社/ブロックチェーンビジネス担当主幹。2000年入社。入社以来、HR-Tech分野、デジタルガバメント対応分野等新分野でのITビジネス企画、構築を担当。現在はブロックチェーンビジネス担当として、ブロックチェーンサービスの構築とブロックチェーンを実ビジネスに活用する上での課題調査、その解決策の研究を行っている。日本人工知能学会優秀賞受賞。

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

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