ビットコインはリスクオフの流れで下落。CPI発表受けた金利急騰やCoreWeaveショック、地政学リスクに伴う市場動揺で(仮想通貨市場レポート 10/19 号)

特集 暗号資産 週間マーケットレポート

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

10/11~10/17週のサマリー

  • 米9月消費者物価指数(CPI)のコア指数が予想を上回り、米10年債利回りは一時5.32%まで上昇
  • 「CoreWeave・ショック」を発端とするネオクラウド企業・AIインフラ投資への信用不安拡大
  • ゼレンスキー大統領によるロシアの停戦違反指摘や、ロシア製油所へのドローン攻撃による操業停止報道を受け、WTI原油先物価格が再び100ドルを突破

暗号資産市場概況

10/11~10/17週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲2.55%の12,805,200円、ETH/JPYの週足終値は同▲5.36%の375,790円(※終値は10/17の当社現物EOD[10/18 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、リスクオフの流れが顕著な一週間となった。中東・ウクライナ情勢の悪化に伴うWTI原油先物価格の100ドル突破とそれに起因するインフレ懸念に加え、中国・CXMT社のメモリー半導体技術の進展による半導体サプライチェーンへの影響懸念が重荷となった。さらに、AI向けクラウドサービスを提供するCoreWeave社の信用不安も、このリスクオフの流れを加速させる要因となった。

週初、トランプ大統領がロシア・ウクライナ双方によるエネルギー施設への攻撃停止を発表したことで、ビットコインは上昇スタートとなった。しかし、12日にウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアが停戦に違反した」と発言したことを機に原油の供給不安が広がり、原油先物価格の上昇とともにビットコイン価格は下落へと転じた。

14日には米国の9月消費者物価指数(CPI)が発表され、コアCPIが予想の0.2%を上回る0.3%となったことで追加利上げ観測が強まり、米10年債利回りは一時5.32%まで急上昇した。しかし同日、AI需要を背景に急成長してきたCoreWeave社を巡る信用不安が突如表面化した。同社が発行していた2032年満期の無担保社債(表面利率9.625%)の利回りが15%台へと急騰し、価格は額面1ドルあたり80セント割れ(77セント台)まで急落。さらに同社の5年CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も一時1,200bp(12%)を超えて急拡大し、市場ではデフォルト(債務不履行)リスクへの警戒が一気に跳ね上がった。

この「CoreWeaveショック」を受け、金利上昇局面において「借入依存の資金繰り」で巨額のAI設備投資を回収できるのかという不信感が波及。CoreWeaveを発端としたネオクラウド(AI向けの計算能力をネット経由で貸す新興クラウド)企業や半導体関連株へ売りが広がり、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は下落基調を強め、ナスダック総合株価指数も一時2%を超える急落となった。この市場の急激なショックにより、CPI発表直後に5.32%まで上昇していた米10年債利回りは、株式・リスク資産からの逃避資金(リスクオフの米国債買い)が殺到したことで急反転し、逆に低下へと向かう市場展開となった。

翌15日、アジア市場ではAI半導体株の売りが拡大した。特に韓国市場では、AI向けHBM(高帯域幅メモリー)の主力供給網であるSKハイニックス(一時11%超安)やサムスン電子(同10%近辺の下落)に外国人の集中売りが浴びせられ、韓国総合株価指数(KOSPI)は前日比8.00%安(5,528.05ポイント)まで暴落。市場全体で20分間の売買停止措置(レベル1のサーキットブレーカー)が発動される大荒れの展開となり、終値でも7.57%安を記録した。この「CoreWeave・ショック」の波及を受け、日本株式市場でも日経平均株価の終値が史上3番目の下げ幅となる3,318円安(64,425円)を記録した。

同日(15日)の米国市場では、米9月生産者物価指数(PPI)が予想を上回る強い内容となったものの、リスクオフによる米国債への逃避需要から米10年債利回りは低下傾向を維持。ビットコインもリスク資産全般の売りに押され、一時80,000ドルを割り込む場面が見られたが、CoreWeaveの第2位株主(株式約10%保有)でGPU供給元でもあるエヌビディアのジェン・スン・フアンCEOが、「CoreWeaveの資本コストは減少しており、資金面で支える必要はない(財務の健全性は保たれている)」といった旨の発言をしたことでリスクオフの巻き戻しが入り、ビットコインも82,000ドル付近まで急反発を見せた。

しかし翌16日の米国市場では、再びAI関連銘柄を中心に売りが膨らみ、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は8営業日連続下落となった。さらに17日には、ロシアのリャザン製油所がドローン攻撃により操業停止したと報じられ、WTI原油先物が再び100ドルを突破すると市場の警戒感が強まり、ビットコインは再び80,000ドル付近まで押し戻されて週を終えた。

ビットコイン現物ETFは2週連続の純流出となり、マイクロストラテジー社の買増し数量も今年最少の250BTCにとどまるなど、需給面の下支えは弱い。

今週は目立った経済指標の発表が少ないものの、引き続きCoreWeaveを発端とするネオクラウド企業の資金調達不安とクレジットリスク(信用リスク)への懸念が市場の重石となると見られる。

折しも、IMF(国際通貨基金)が10月13日に公表した「国際金融安定性報告書(GFSR)」では、現在の世界金融システムにおける3つの主要リスクとして以下を挙げている。

  • AI関連資産の大幅な値下がり(AIバブルの修正リスク)
  • 国債利回りの急上昇(財政懸念やインフレ継続に伴う金利高)
  • サイバー攻撃の深刻化

今回のCPI発表を受けた金利急騰や、CoreWeave社の信用不安・社債急落、アジア・米国市場での株安、地政学リスクに伴う市場動揺は、まさにIMFが警告したリスクに現時点で直面していることを裏付けている。クレジット市場の動向やハイテク株の不透明感が強まる中、来週のFOMC(米連邦公開市場委員会)を迎えるまでに、ビットコインが心理的節目である80,000ドルを維持できるかが目先の最大の焦点となる。

1) BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

3)米BTC現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、BTC価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がBTC価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

4)米ETH現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、ETH価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がBTC価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

5)米XRP現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(日足)、XRP価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がXRP価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

10/11~10/17週の主な出来事

10/18~10/24週の主な予定

【今週のひとこと】 CoreWeaveショック

 日本時間15日に日本株が急落し、とりわけ日経半導体指数が10%超下落したことは市場から注目を集めたトピックでした。この要因として米国のクラウドサービス企業であるCoreWeaveの社債の利回りが急騰(債券価格は急落)したことが考えられます。

CoreWeaveは2017年に創業、元々はEthereum等の暗号資産マイニング事業からスタートしましたが、その後はマイニング用に保有していた大量のGPUを活用してAI向けGPUクラウドへ事業転換を果たしました。現在はOpenAI、Microsoft等のAI開発企業やクラウド大手にAI半導体を搭載したデータセンターを貸し出す「ネオクラウド」の代表的企業として知られています

CoreWeaveにはNVIDIAやCisco Systems等ハイテク大手の他、Blackstone等の大手ファンドが巨額の出資・融資を行なっているとされています。中でもNVIDIAはCoreWeaveの第2位株主であり、約10%を保有しています。一方でCoreWeaveは巨額のGPU・データセンター投資を借入で賄っており、AI需要の拡大と継続的な資金調達を前提とした高レバレッジ型の事業モデルを採用しています。

CoreWeaveは今回さらなる設備投資に向け、将来的に投資適格格付けを取得して、保険会社等の巨額資金へアクセスする構想を説明しました。しかし市場は追加借入によるレバレッジ拡大を警戒、5年CDS(クレジット・デフォルト・スワップ=企業の信用リスクを流通可能な取引形態にしたもの)は約1,195bpまで急拡大し、5年以内のデフォルト確率60%超を織り込む水準となったのです。さらに一部社債は額面1ドル=80セントを下回り、利回りは15%近辺まで上昇しました。

これを受けてCoreWeaveと関わりのあるデータセンター企業であるGalaxy Digital、Core Scientific等の債券にも売りが波及しました。NVIDIAのフアンCEOが「CoreWeaveは日々強くなっている」「資金面で支える必要はない」と発言したことでCoreWeave株は急反発するも、米国時間16日には再び売られ、人工知能(AI)債務への不安再燃でハイテク株を中心に大きく下落しました。

本件は「金利上昇→資金調達コスト上昇→AIインフラ投資採算悪化→信用不安→設備投資縮小→GPU需要減速」の可能性を初めて具体的に市場へ意識させた事例となりました。一方でキャッシュリッチなMetaの5年CDSは100bps程度(日本時間15日時点)の低水準でほぼ横ばいを維持している点からは、AI・半導体関連企業の株であればひとまず買われるといったブームから、選別が進む時代への示唆を得ます。

CoreWeaveのコーポレート格付けおよび無担保社債はジャンク級(投機的領域)に位置付けられており、米国ジャンク債の利回りは炭鉱のカナリアとも呼ばれます。今回の件が投資家センチメントの悪化を余儀なくし、リスク資産全体への影響をもって今後も尾を引くのか、健全な過熱感の調整という形で結末を遂げるのか、注目したいところです。

このレポートについて

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この記事の著者・インタビューイ

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