ビットコイン史上最高値更新、今週米議会で暗号資産関連法案が集中審議される「Crypto Week」を解説(仮想通貨市場レポート 7/14 号)

特集 暗号資産 週間マーケットレポート

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

7/6~7/12週のサマリー

  • BTC/JPYが2025年1月ぶりに史上最高値を更新
  • 米国の減税法案や新関税率の発表が暗号資産市場に影響
  • Ripple社CEOブラッド・ガーリングハウス氏が米上院銀行委員会で証言

暗号資産市場概況

 7/6~7/12週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+10.70%の17,304,700円、ETH/JPYの週足終値は同+18.93%の432,855円であった(※終値は7/12の当社現物EOD[7/13 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、ビットコイン(BTC)が円建て・ドル建ての両方で史上最高値を更新したことを受け、大きく盛り上がりを見せた。前週の米雇用統計では、堅調な雇用環境が示され、加えて米国での減税法案の可決が投資家心理を押し上げ、暗号資産や株式などリスク資産への資金流入が加速した。今週は、米下院で「Crypto Week」と題し、暗号資産関連の3つの重要法案(GENIUS法案、CLARITY法案、および反CBDC法案)の審議・採決が予定されており、市場では引き続きポジティブな材料として注目されている。

一方で、トランプ大統領は8日、日本を含む複数国に対して新たな関税措置を発表した。前週に成立した減税政策の財源確保手段として関税が活用される可能性があるが、それが実際に実現可能かどうかは今後の市場の焦点となる。先週は米長期金利の上昇とともに、暗号資産や株式などのリスク資産も上昇しており、市場は国債増発とそれに伴うインフレ圧力を一定程度織り込んでいる可能性がある。

また、9日にはRipple社のCEO、ブラッド・ガーリングハウス氏が米上院銀行委員会で証言を行った。同氏は、米国における明確な暗号資産規制の欠如が業界の発展を阻害していると指摘し、米国が暗号資産分野でリーダーシップを維持するためには、一貫性と明確性のある規制枠組みの整備が必要であると強調。あわせて、GENIUS法案およびCLARITY法案の早期成立を訴えた。

今週は米下院で前述したGENIUS法案、CLARITY法案に加え反CBDC法案の審議・採決が予定されている。GENIUS法案はステーブルコインの規制整備を目指す法案であり、発行基準や準備金、AML要件などを確立することにつながる。CLARITY法案は暗号資産の監督権限を米商品先物取引委員会(CFTC)に付与する一方で、証券性のある資産には引き続き米証券取引委員会(SEC)が関与する体制を整えることで、管轄の不透明性の解消を目指す法案である。反CBDC法案は米国における中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行に対し、プライバシーの観点から制限を加えることを目的とする法案である。上記3法案の審議の注目点や今後の展望は【今週のひとこと】で解説を行っているため、引き続きそちらを参照されたい。

1) BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3) ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

4) イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

7/6~7/12週の主な出来事

 

7/13~7/19週の主な予定

【今週のひとこと】 Crypto Weekを控えて

本文でも触れた通り、7月14日〜18日は『Crypto Week』と題され、米国議会において暗号資産関連の主要法案が下院で集中的に審議・採決される重要な一週間となります。法案審議が順調に進めば、制度の明確化への期待が高まり、足元の市場の支援材料となる可能性があると見られています。

各法案の詳細を掘り下げるとともに、審議の注目点や今後の展望について考察します。

①  GENIUS法案は、ステーブルコイン連邦法による規制体制を初めて整備する法案です。法案内容は、発行企業に対し、1:1 の流動資産リザーブ、 監査・開示の義務付け、AML/KYC 体制の構築などを義務化。連邦政府と州政府の両規制監督が共存する枠組みを予定とされています。上院では68対30の賛成で可決済み。下院で可決されれば大統領署名を経て成立の見込みです。

②  CLARITY法案は、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の役割を明確化し、デジタル資産を「証券」「商品」「ステーブルコイン」に分類。プラットフォームやトークンの登録・監督を二元管理できる仕組みづくりを目指す内容となっています。

③  反CBDC法案は、連邦政府によるCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行を永久に禁止し、アメリカ国民の金融プライバシーの保護を目的とした法案です。政府による過度な監視社会化への懸念に対する立法的対抗措置として位置づけられており、自由・分権主義に基づく内容となっています。

米国において、こうした暗号資産関連法案の審議が活発に進展している背景には、トランプ政権が明確に「親暗号資産」(クリプト・フレンドリー)路線を打ち出していることが挙げられます。2025年1月の政権発足後、トランプ政権はデジタル資産規制の枠組みを整備する目的で「暗号資産タスクフォース」を設立しており、トランプ大統領自身も「米国を世界の暗号資産の中心地とする」と明言するなど、その政策ビジョンは極めて明確です。SECもバイデン政権時代とは異なり、業界への追及姿勢を大幅に緩和。OCC(米国通貨監督庁)もRipple、Circle、Krakenといった主要暗号資産企業に対して、信託銀行認可の取得を後押しするなど、既存金融との融合を積極的に支援しています。その一方、伝統的な金融機関側もステーブルコイン発行や決済領域での暗号資産活用を進めており、金融業界と暗号資産業界の垣根は急速に低くなりつつあります。

トランプ政権は、国家的準備金の構築(SBR法)、司法・規制の姿勢転換、既存銀行制度との統合支援、業界との協働という4本の柱を軸に、米国をグローバルなクリプトリーダーとする方針を明確に打ち出しています。こうした政策運営の一環として迎える今回の「Crypto Week」は、早ければ秋頃までに整備される可能性のある米国デジタル資産法体系への重要な節目となります(なお、トランプ氏は8月中の法体系成立を目指しています)。主要法案の下院での審議・採決結果が市場にも大きく影響を及ぼす可能性があり、まさに暗号資産業界にとっての重要なターニングポイントといえるでしょう。米国が暗号資産の「法制度先進国」となるかどうかを占う一週間となりそうです。

このレポートについて

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この記事の著者・インタビューイ

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