「やりたくもないし、価値もないと思ってやっていることは、今この瞬間に辞めても誰も困らない」箕輪厚介という、あたらしい経済時代の働き方 13,000字インタビュー(3)

特集 「あたらしい経済」時代の働き方

箕輪厚介

もっと狂ったように遊ばないと、これからの時代は生き残れない

−普通に働いているサラリーマンが大多数いるからこそ、箕輪さんのような人が目立ちやすいし、レバレッジをかけられるのではないでしょうか。前回のお話のように、本当にみんながイージーゲームだと気付いてやりだすと、どうなると思いますか?

それは僕も今まで死ぬほど何回もシュミレーションしてきました。僕が言っていることを全員がやりだして全員ブランド人になったら世の中全体はどうなってしまうんだろうと。死ぬほど考えているんですが、今のところ答えは見つかっていないです。

ただそういうことは、まず起きないんじゃないかと思っています。そして仮にそうなったとしても、世の中は混乱しないんじゃないか、何も変わらないのではないかと。

今の世の中で作られているものの殆どが要らないと考えれば、全員が好きなことをやる世の中は成立できると思います。

例えば出版業界でいうと、絶対に読みきれない数の本を出版社の大勢の人がひたすら作っているという状況です。

例えば何かのテーマがブームになったとします。そうすると色々な出版社はそのテーマで本を作ったり雑誌で取材したりする。出版社に限らず多くの企業がそのブームに乗っていろいろなコンテンツを作ったり、周辺でビジネスを始めたりするわけです。

で、そういったビジネスを始めた企業たちはそのビジネスを大きくするために、お金を出して広告をだして強引に盛り上げていく。そうして盛り上げないと自分たちの始めたビジネスが食えなくなるからですね。

それってふと考えてみると、自分たちで強引に必要そうなものを作って、強引に必要なんだとアナウンスして消費活動を促しているように思えませんか? つまり無駄にぐるぐる人を動かし、お金を回しているだけですよね。

そうやって無駄なものを買わされた人はお金がなくなって、また要らないものを考えて作って売るという連鎖の繰り返しが起こります。実はそういうことで経済の大部分が回っていると思っています。

そう考えると、そもそも何やっているんだろ?と思えてきますよね。だから一斉にみんなが「嫌なことやーめた」って仕事を辞めて本当にやりたい事だけやったとしても、案外世の中は回ると思います。そもそも要らないものを過剰に作り出してみんなでぐるぐる回しているだけなんで。

そしてそこでAIとかの技術発展が進めば、より嫌なことやめても生きていけるようになるわけです。

本当に価値があるものを生み出している人や経済活動は本当に少ない

つまり本当に価値があるものを生み出している人や経済活動は本当に少ないと思います。

そしてその無駄があって壮大に現在の経済は回っているのも事実なんですが、いまの若い人達は「要らないものを作って要らないものを消費していること」が、くだらないなと思っている。要らないもの作るよりシェアすればいいじゃんみたいに。

そういう時代においては無駄に作られたものよりも、遊んでいるようなことの方に価値が出てくるわけです。

それを分かっているからこそ、堀江さんはチャンバラやったり祭やったりしているんだと思います。そしてこれから世の中は急速にそっちの方向に傾いていくんだろうなと思います。

だから僕も堀江さんとかに比べたらまだまだだなと最近よく思っています。このままではダメだと。もちろん幻冬舎にいることでいまの自分があるので、そういったような旧来の経済における生産活動も続けていかなければならないですけど、個人としてはもっと狂ったように遊ばないと、これからの時代は生き残れないのではないかと恐れています。

ある種の労働というのには一定の価値があるんですが、本当は意味がないものが大半なんじゃないかと。なのにみんな何で必死に働いているんだろうと思っています。

もちろんそういった経済活動をして、「世の中こうしたい」と思ってやりたくてやっている活動は、熱を帯びるし、ファンが集まるのでいいと思います。そういった仕事には価値があるし、これからも熱を持つと思います。

あなたがやりたくもないし、価値もないと思ってやっていることは、今この瞬間に辞めても誰も困らない

一番危険なのはそういったことを考えず仕事を「やらされている」状態です。

本の最後にも書いたんですが「あなたがやりたくもないし、価値もないと思って作っているものとか、やっていることは、今この瞬間に辞めても実際問題誰も困らない」と思います。なぜならそういう仕事には代わりがいるからです。

自分がいないと仕事が回らないのではというのはある種の幻想で、その義務感でやっている仕事の多くはその人がいなくなっても何事もなかったように誰かが代わりにできてしまうことです。

でも逆に当人が心からやりたいことで、本当に熱狂してやっている仕事は、その人にしかできない体重のかけ方をするからオリジナルなものになります。そうなると簡単には代わりがいないんですよね。

だからほんとうに何者かになりたかったら、できるだけやりたくないことをやらないと腹をくくることが大切です。

安心してしまうんですよね、日本人は。我慢して努力すると何者かになるって今まで教え込まれてきたので「苦しんで努力しているから報われるはずだ」とつい安心してしまうんです。

もちろんそれもなくはないのですが、それは二重構造になっていて、本当に歯を食いしばって突き抜けなければいけないけど、その先はやりたくないことをやっていると労働コモディティにからめとられるから注意が必要です。その先はクリエイティブな競争になるので、どこかで自分の好きな仕事だけをできる環境を作って、自分を変えていかないといけないともいます。

個人のコミュニティにも経済圏が作れる

 −箕輪編集室のようなコミュニティにおいて、トークンなどを発行していわゆるトークンエコノミーを形成することが今後さらにコミュニティを強化させるのではと思いますが、そのような予定はありますか?

僕あまりブロックチェーンとか仮想通貨について詳しくないですよ(笑)。原理が意味わからない。ちょっと簡単にトークンを発行できるようなサービスがあるので、それを使ってやろうかなとも考えているんですが、まだ始めてないです。

しかし僕のコミュニティ内ではすでに経済圏は着実に作れてきていると思います。

その例として僕が本の発売予約をすればAmazonランキングで1位も取れるし、「箕輪大陸」っていう映画を作って全国ロードショーしたいといえばクラウドファウンディングでお金は集まるし、水道橋博士と格闘技するといえばスポンサーが決まるし。

先日も海外のお土産屋さんで数千円で買ってきた、なんの価値のないような大仏の置物が、僕がストーリーという付加価値をつけて2万円で売れたりしたんですよね。

そしてそれらを買ってくれているのは、ほとんど箕輪編集室のメンバーです。

そんなメンバーが会費を払ってくれたり、いろいろなものを買ってくれたりすると、多くのお金が僕に入るわけです。でも僕はそもそもあまりお金に興味がないし、自分だけで使いきれないので、この経済圏の中で使い始めるわけです。

サロンメンバーが使える別荘買ったり、編集室内に活動のためのMacや撮影機材などを買いたいっていう若い奴がいたら買ってあげたりして、お金をサロン内に戻し始めるんです。自分とメンバーのみんなが、これから進めたいビジョンにお金を戻し始める。そうすると経済圏がぐるぐる回り始めるんです。

よく信者ビジネスじゃないか!と批判されるんですが、日本だって日本の中で経済圏をぐるぐる回して、貿易をやっているだけで、地球ですら地球という中でぐるぐる経済圏を回しているだけですよね。だから宇宙人がみたら地球人に対して、信者ビジネスじゃないかって批判するんじゃないかな(笑)。

もちろん箕輪編集室で経済圏が著しく成長してきたと感じたのは1000人を超えたころからです。始めた当初はそれはなかったです。それはトークンエコノミーの設計とかと似てると思うんですが、やはり一定の数は大切ですね。数は力を生みます。

一定の数になることで流動性が高まり、流通額も増えるので、そのコミュニティとしてできることの幅が広がっていきました。それが大規模になればなるほど、そのコミュニティでどんどん新しいものが作れるようになってきますし、外部への影響力も増していく。

それが進んでいくと、もはや国みたいになるとも思います。そうなってくると本当に面白いことが起こせるのではないかとワクワクしています。

箕輪編集室の未来

−箕輪さんは今後ご自身のコミュニティをどのように成長させていきたいですか?

近い将来新卒で会社に就職するよりも、あるトークンエコノミーや経済圏に参加した方が生活できるじゃんという感じになるんじゃないかと思います。

だから僕の「箕輪編集室」でも会費を払っておけば、少額の追加料金はとるかもしれないですが、ゲストハウスと衣類と食事は大丈夫よっていう状況にしたいです。そうやっていたらまあみんな死ぬことはないわけです。

それで最低限のインフラを提供した上で、メンバーが外貨を稼ごうと思ったらそのコミュニティの中に外貨を稼げるスキルやノウハウを提供してくれる人がいて、僕もそこに人脈を提供していくみたいなイメージです。

僕のコミュニティは現在日本全国にメンバーがいるので、例えば僕はどこにいって財布をなくしても困ることはないです。ありがたいことにみんなが財布ないならうち泊まってくださいとか、ご飯食べましょうとか誘ってくれるんです。なんだか寅さんみたいですね、寅さん見たことないけど(笑)。

それは今僕しかできていないけど、いずれサロンメンバーの全員がそうなるようにしたいですね。「俺、箕輪編集室なんだ」って言ったら、日本のどこにいても、みんなが助けてくれるみたいに。

「人は最低限のインフラが満たされた時に初めて本当にやりたいことに注力できる」とCAMPFIREの家入さんがよく言っています。

食っていくために頑張らなきゃいけないっていう状況はやっぱり辛いし、今後そういう人は先ほどの理由でどんどん没落して言ってしまうと思っています。

困っている人がいたら「困ってるんだったら箕輪編集室の海辺の別荘行って、そこでやりたいこと見つけろよ」と言うことができるようなコミュニティを作っていきたいと思います。

(おわり)

→(1)「個としての力をつけろ、会社はこうあるべきという幻想を壊せ」 

→(2)「常識や平均を突破できさえすれば、ビジネスや仕事なんて超イージーゲーム 」 

→箕輪厚介 インタビュー全3回をすべて読む

編集:設楽悠介(幻冬舎)・伊藤工太郎(幻冬舎)

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本書では新時代の哲学を体現する箕輪氏の「働き方」を、32の項目として立てて紹介する。

(マガジンハウス刊)

この記事の著者・インタビューイ

箕輪厚介

1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹)、『逆転の仕事論』(堀江貴文)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。『多動力』(堀江貴文)、『お金2.0』(佐藤航陽)、『日本再興戦略』(落合陽一)、『人生の勝算』(前田裕二)などを編集。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス刊)。

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今はリアリティショーが求められているので、だからこそ、そういう意味でも多くの人たちにチャンスはあると思っています。 僕もパンティ箕輪とか、本当に子供の悪ふざけの延長みたいなことが拡大して行って、雑誌やテレビに取り上げられて箕輪って面白いよねとなっている。それは普段本を作ってる人がめちゃくちゃな人生を送っているというリアリティがあるからです。

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本当に価値があるものを生み出している人や経済活動は本当に少ないと思います。 そしてその無駄があって壮大に現在の経済は回っているのも事実なんですが、いまの若い人達は「要らないものを作って要らないものを消費していること」が、くだらないなと思っている。要らないもの作るよりシェアすればいいじゃんみたいに。 そういう時代においては無駄に作られたものよりも、遊んでいるようなことの方に価値が出てくるわけです。