イーサリアムの次なるスケーリングとMegaETHのビジョン(MegaETH Bread × PG Labs 田上智裕)

特集 イーサリアムとL2、そのエコシステムの可能性 Ethereum and Layer 2 Unlocking the Full Potential of the Ecosystem

PG Labs

イーサリアムの次なるスケーリングとMegaETHのビジョン

イーサリアムがスケーリングの新たな段階に入る中で、議論の焦点は「スケールできるかどうか」から「どのようにスケールすべきか」へと移りつつある。スケーラビリティ、UX、そしてクロスチェーンの前提は、もはや周辺的なテーマではなく新しいネットワーク設計の中核になっているのだ。

イーサリアムとL2、そのエコシステムの可能性」シリーズ第2弾では、PG Labsの田上氏とMegaETH(メガイーサ)のBread氏が対談。ロールアップ中心の世界の次に何が来るのか、リアルタイム処理がオンチェーンで何を可能にするのか、そしてモノリシックなLayer 2とクロスチェーンインフラが共創できる理由について語った。

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対談:MegaETH Bread × PG Labs 田上智裕

田上:Pheasant NetworkとPG Labsの創業者である田上です。本シリーズの第1弾では、イーサリアム・ファウンデーションのMo氏を招いて日本のイーサリアムエコシステムについて議論しました。今回はMegaETH(メガイーサ)のBread氏とイーサリアムのスケーリングについて議論したいと思います。

Pheasant NetworkはAIを活用したインテント(Intent)指向のクロスチェーンインフラであり、MegaETHのローンチパートナーとしてメインネットを初日からサポートしています。もう一つのPG Labsは、日本拠点のWeb3スタジオとして、世界中で愛される”Public Goods”の創出を目指して活動しています。

今日はイーサリアムのスケーラビリティに関して、今もっとも最先端を行くプロジェクトと言っても過言ではないであろうMegaETHのBreadと議論できることを楽しみにしています。Bread、今日はよろしくお願いします。

PG Labs 田上智裕氏

Bread:Tomo、今回は誘ってくれてありがとうございます。よろしくお願いします。

1.「リアルタイムブロックチェーン」MegaETHとは

田上:まずは自己紹介とプロジェクト紹介からお願いします。Bread、あなた自身とMegaETHについて簡単に教えてもらえますか。

Bread:こんにちは、Breadです。MegaETHでGTM(Go-to-Market)のリードをしています。MegaETHは「リアルタイムブロックチェーン」を掲げていて、現在のロールアップ中心のロードマップを最大限に活用しながら、極めて高速でスケーラブルな実行環境を構築しています。

目標は、オンチェーンアプリがスマートフォンのアプリと同じ感覚で動く世界を作ることです。

田上:MegaETHのことを初めて知った際に「リアルタイムブロックチェーン」という言葉がとても印象に残っていました。多くのプロジェクトがまず技術仕様から説明を始める中で、体験のイメージを最初に提示していたのが印象的だったんです。

Bread:そこは意識したものでした。TPSやブロックタイムを説明する前に、ユーザーが「どう感じるか」を伝えたかったんです。ユーザーはブロックタイムを測って使っているわけではないですからね。

田上:そうですね。最終的にユーザーが判断するのは、普通のアプリとして使えるかどうかだけです。私自身も一人の開発者としてそう実感しています。その意味で、MegaETHが実行環境とレスポンスを起点に設計されていることは、これからのフェーズにおいて非常に重要な前提条件だと思います。

2.ロールアップ中心のスケーリングを超えて

田上:ArbitrumやOptimismのようなOptimistic Rollupや、LineaやZKsyncのようなzkRollupなど、イーサリアムのスケーリングはロールアップ中心で進んできました。その中で、MegaETHが提供しようとしている新しさは何でしょうか。

Bread:私たちは、MegaETHをロールアップ中心のロードマップが行き着く論理的な到達点だと考えています。ロールアップは必要なステップでしたが、それだけでは解決できない課題も残っています。

多くのロールアップは相互運用性を最優先しているため、意図的に似た設計にしています。ただマーケットを見ていると、単一のステートを持つ環境がもたらすUXや流動性の価値は明らかです。相互運用性が進んだ結果、逆に「一貫した実行環境」の重要性が浮き彫りになってきたのです。

私たちは、モノリシックな実行環境に価値が集約されると考えています。ただし、従来のLayer 1と同じやり方は取りません。コンセンサスのような重たい部分はイーサリアムに委ね、実行環境に極限までフォーカスしています。

田上:なぜ現在の実行レイヤーの多くが類似の設計になっているのかという点については、開発難度も影響していると思います。例えばOptimismのSuperchain構想が今のところ成功しているように、いわゆるLayer 3のようなネットワークを比較的簡単に開発できる環境が整備されたことが大きいです。ある程度体力のあるプロジェクトは、自前のLayer 2を開発したがる傾向にあるので、そうなった場合にOP Stackを活用すれば開発難度をぐっと下げることができます。

MegaETHの思想に関して言うと、イーサリアムを使うというより前提にする設計だと感じました。

Bread:その通りです。

最も速く、最も大きなチェーンは、すべてを自前で持つチェーンではありません。最も信頼できるレイヤーに任せるべきものを任せたチェーンです。イーサリアムほどそれに適した存在はないと思っています。

3.次のフェーズを形作るユースケース

田上:ではそうした設計がある中で、今後MegaETHで特に重要になるユースケースは何だと考えていますか。

Bread:コンシューマーアプリとトレーディングです。理由は非常にシンプルで、レイテンシです。

田上:ここはMegaETHの思想が最もはっきり出るところですね。

Bread:そうですね。MegaETHはコンセンサスをイーサリアムに委ねているため、Layer 1が物理的に到達できないレベルのレスポンスを実現できます。「光の速度を超える」すなわち物理的な制約を受けない、というのは非常に大きい。

田上:トレーディングの分野では、その差がそのまま使われるかどうかに直結しますよね。私もPheasant Networkを運営していて、技術的には成立しているのにUXで崩れるケースを何度も見てきました。一瞬待たされるだけで、ユーザーは離れてしまう。

Bread:その通りです。ブロック生成中に生じる価格のズレが小さくなることで、マーケットメイカーはより伝統的な市場に近い感覚で動けます。しかも、単一シーケンサーによる予測可能性があるので、その体験が安定します。

Web3がこれまで市場に届かなかった理由の多くは、機能不足ではなく速度不足だったと思っています。

田上:MegaETHのような環境が整備されることで、リアルタイムであることが例外ではなく標準になっていくと。それはイーサリアムはもちろんブロックチェーンそのものにとって大きな転換点ですね。

4.クロスチェーン前提の時代における単一チェーンの価値

田上:スケーラビリティから少しトピックを変えたいと思います。

昨今はクロスチェーンが前提の時代になっていますが、そんな時代において単一チェーンの価値はどこに残ると思いますか。

Bread:そのチェーンが、アプリケーションにどれだけ良いパフォーマンスを提供できるかに尽きると思います。待たされず、安くて速い。MegaETHはその点で突出した存在を目指しています。

壁がなくなれば、アプリは最も快適に動く場所を選ぶでしょう。

田上:全体的にそこそこ、ではなくここが一番という選ばれ方ですね。レスポンスとスケーリングにここまで明確に振り切っているネットワークは、開発者にとってもわかりやすいと思います。

Bread:わかりやすさは重要です。チェーンが何に最適化されているかが明確であれば、意思決定のコストが下がります。

田上:私の経験上、企業や開発者がオンチェーンアプリを開発する場合、まず気にするのがどのチェーン・ネットワークを選ぶかです。特にLayer 2は基本的にOptimistic型かZK型かに分類されますが、分類されたあとにどのネットワークがどのように異なるのかをネットワークごとに理解して把握し続けるのは非常に困難です。私みたいにLayer 2のインターオペラビリティに取り組むプロジェクトをやっていない限り相当厳しいと思います。

その中で、ネットワークごとにここが一番という特徴を出すことができれば、結果としてマルチチェーン環境は混沌とするのではなく、むしろ整理されていくのかもしれません。

Pheasantのようなクロスチェーンインフラとの協業については、どう見ていますか。

Bread:多くのチェーンは今後も存在し続けると思います。たとえMegaETHが多くのアプリにとって最終的な実行レイヤーになったとしてもです。だからこそ、どこからでも自然に資産を移動できるPheasantのようなインフラが必要になります。

田上:ユーザーの出発点は常にバラバラですからね。

Pheasantでは、ユーザーが迷わない動線を最優先に設計してきました。
MegaETHのような高性能な実行環境が増えるほど、その目的地の価値が高まりクロスチェーンインフラの役割も明確になると感じています。

Bread:競争ではなく、体験を成立させるための役割分担ですね。

5. イーサリアムが次のフェーズに進むための最大の課題

田上:最後に、少し視野を広げてイーサリアム全体について議論させてください。イーサリアムエコシステムにおいて、今後最も重要な課題は何だと思いますか。メインネットローンチ後のMegaETHのビジョンを踏まえ意見を聞かせてください。

Bread:繰り返しになりますがやはりスケーリングです。ただし、スケールしつつ分散性を犠牲にしないことが非常に重要です。これは簡単ではありません。

田上:同意です。だからこそ、これだけ多様なアプローチが並行して生まれているのだと思います。MegaETHのような試みも、その健全な実験の一つとして、イーサリアム全体を前に進めている存在だと感じます。

Bread:一つの正解に急いで集約するより、複数の仮説を同時に試す方が健全です。その中で、我々はMegaETHをアセット創出とAIインタラクションの中心地にしたいと考えています。そのために必要なのが、圧倒的なスピードとコストの安定性です。

MegaETHを語る際にスピードが注目を集めやすいですが、安定性も非常に重要視しています。スケーリングを高めた上で、想定外の使われ方をされたときにどれだけ耐えられるかが本当の勝負だと思っています。

田上:なるほど、それはインフラを提供するプロジェクトの立場でも同じことが言えると思います。スケーラビリティが高いけど安定性が低いのであれば、それは何も解決していないことと同義です。特にアセットやAIといった新しい領域では、実行環境の質がそのまま可能性の広さになります。

MegaETHがどんなビルダーやユースケースを引き寄せていくのか、そしてそれがイーサリアム全体にどんな影響を与えるのか、とても楽しみにしています。Bread、今日は貴重な話をありがとうございました。

Bread:こちらこそ、今日は多様な視点からTomoと議論できて楽しかったです。日本の皆さんとも今後さまざまな交流ができることを願っています。

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この記事/連載について

この記事は PG Labs による寄稿コンテンツです。今後もイーサリアムとL2にフォーカスし、多数のプロジェクトのプレイヤーや有識者のインタビューや対談コンテンツを掲載していきます。

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PG Labsは「Public Goods(公共財)」の理念を掲げ、「あらゆる資産をオンチェーン化する」ことを目的としたWeb3スタジオです。 イーサリアムとLayer 2を軸にしたWeb3事業を社会に浸透させるために、企画・開発支援、グローバル展開・マーケティング支援、暗号資産トレジャリー支援事業を展開しています。また、これらの事業を支えるイーサリアムとLayer 2のインフラ整備に貢献すべく、Layer 2のインターオペラビリティプロトコルであるPheasant Networkの開発にコミットしています。

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